国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

石毛直道館長・栗田靖之教授・杉田繁治教授 退官記念講演会

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2002年3月19日開催

栗田靖之教授・杉田繁治教授 退官記念講演会

ごあいさつ 押川文子

講演風景

杉田繁治教授、栗田靖之教授の退官記念講演に先立ちまして、お送りする国立民族学博物館の一員として一言ごあいさつを申しあげます。

私は、民博に附置されております地域研究企画交流センターの押川と申します。長年民博とともに歩んでこられた杉田先生、栗田先生をお送りする会にはまことにふさわしくない者がごあいさつをしておりますことをどうぞお許しくださいませ。

本日は、年度末の大変にお忙しい時期に、また春とはいえ少し肌寒い陽気の日に多数お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。このように多数の皆様にきょうお集まりいただきましたこと自体、両先生の民博における存在の大きさを示すものと改めて感じております。

両先生の業績につきましては、それぞれの記念講演に先立ちまして、また別途紹介させていただきますが、杉田先生、栗田先生、お二方とも昭和51年、1976年に民博に着任されて以来、この民族学博物館の発展に大きな大きな業績を残してこられました。今でこそ情報工学と人文社会科学系の研究がつながっていることは、ある意味では当然になっておりますけれども、杉田先生が着任された1970年代後半という時期に、すでにそのお見通しを持ってお仕事を始められたことは、まことに先駆的なことでございました。皆さまもよくご存じのとおり、民博はそれ以来、情報工学を展示や研究の中に生かすということについて、内外の研究機関の先頭を走ってきました。杉田先生はまさにそれを支えてこられたのです。また、ここ6年ほどは、副館長、企画調整官というお立場で、この大きな研究機関、そして広く大学共同利用機関の研究活動について、調整役を務めてこられました。

栗田先生は、長らく情報管理施設長あるいは博物館にかかわる諸委員の委員長として、民博の博物館展示に大きな貢献をされてきました。同時に、ブータンという地域について、日本において、あるいは恐らく世界においても非常に先駆的な研究をされてこられた方であります。国民国家の問題が大きくクローズアップされるようになりまして、小国研究としてブータン研究は最近非常に注目されておりまして、若い研究者がたくさん出ておりますけれども、栗田先生の幅広くバランスのとれた、共感と理解に満ちたブータンの研究は、そういう若い研究者にとりましても大きな道しるべになるものです。

両先生の大きな業績に対しまして、本年4月から民博の名誉教授としてなられることがすでに決定をしております。

こうした幅広い貢献とともに、私のように民博とはあまり関係ないところから、途中からこの機関に来たものにとりましては、杉田先生、栗田先生はある意味では民博の大変にユニークで豊かな、なんといいましょうか、文化といったようなものを象徴される存在でございました。特にここ1年ほど、様々な館内の会議や委員会等で両先生に接する機会が増えまして、その思いを強くしております。私などが近視眼的に、黒白はっきりつけろといったような議論を吹っかけましても、両先生とも非常にゆったり構えて、はんなり、おおらかにいつも対応してくださいました。少し迷惑そうな顔をされても、語気一つ変えることはありませんで、私などは、ああこういうのが大人なのかなあ、かなわないなあと思うようなことがよくございました。

この民博が、研究機関でありつつ博物館である、博物館であるとともに研究機関であるという2つの側面の微妙なバランスを保ちながら、関西を中心とする日本の社会に広く深く根付き、注目される研究機関として形成され、そしてそこに働く研究者にとりましては、恐らくこれ以上望むべくもないほど自由でおおらかな研究環境を維持してきた理由の一つは、栗田先生、杉田先生、そしてもちろん石毛先生初め民博の初期からこの機関を支えてこられた方の、なんともいえない文化とでもいいますか、大人のあうんの呼吸とでもいいますか、そういったものがあるんだということを、最近になりまして、思い至っているところでございます。

国立民族学博物館も来年、平成16年の4月、法人化を迎え、様々な形で組織も変わりますが、栗田先生、杉田先生、そして石毛先生をお送りするということも、一つ時代の節目といいますか、なにか変わっていくなあという感じを禁じえません。

さて、栗田先生、杉田先生は、この4月から晴れて自由な身になられまして、先ほど申しあげました委員会や様々な会議からも解放されて、ますますお元気に活躍されることが目に見えております。その会議や委員会の方に残る私などが、どうぞお元気でご活躍をと申しあげるのは少し違うのではないかと思うんですけれども、それでもやはり最後に両先生の今後ますますのご健康、それからご活躍、そして今後も民博をどうぞよろしくということを申しあげ、感謝の気持ちとともにごあいさつにさせていただきたいと思います。どうも有難うございました。