研究会・シンポジウム・学会などのお知らせ
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2006年9月23日(土)
~9月24日(日)
国際シンポジウム「ユニバーサル・ミュージアムを考える~“つくる” 努力と “ひらく” 情熱を求めて~」 -
チラシダウンロード[PDF:779KB]- 日時:2006年9月23日(土)~9月24日(日)
- 場所:国立民族学博物館 第4セミナー室
- 主催:国立民族学博物館
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後援:財団法人日本博物館協会、全日本博物館学会
日本ミュージアム・マネージメント学会 -
定員:70名(先着順) 参加無料
※参加募集は終了いたしました。
趣旨
博物館とは、さまざまな意味での共生を実践するフィールドである。本シンポジウムでは、ユニバーサル・ミュージアム(だれもが楽しめる博物館)のあり方を多角的にとらえ、今後の新たなる博物館を “つくる” 努力、“ひらく” 情熱を民博から発信したい。
1日目は「ユニバーサル = 障害者が来館しやすい環境作り」と定義し、「だれも」の具体的内容に迫る。
2日目は「ユニバーサル = 五感の潜在力を開拓すること」と定義し、博物館が提供するプログラムなど、ソフト面の情報交換を行う。
プログラム
第1日 9月23日(土)
キーワードつくる10:00~12:00 民博の常設展、特別展の観覧(自由参加) 12:00~13:30 休憩・昼食 13:30~13:45 シンポジウムの趣旨説明 広瀬浩二郎 13:45~15:15 基調講演
レベッカ・マックギニス
「米国におけるユニバーサル・ミュージアムの現状と課題」15:30~17:30 各地からの事例報告、意見交換
コーディネーター:奥野花代子
パネリスト
ミケール・ハドソン
「プリーズ・タッチ ~ アメリカン・プリンティング・ハウス・キャラハン・ミュージアムの取組みについて ~」
三谷雅純
「博物館テキスト『子ども自然教室』のユニバーサル化の課題」
山本哲也
「バリアフリーであること、バリアフリーを伝えること ~ ユニバーサルな社会を目指す博物館の試み ~」
米田耕司
「ユニバーサルな社会における美術館のあり方」18:00~19:30 レセプション(民博レストラン) 第2日 9月24日(日)
キーワードひらく10:00~12:00 研究発表+見学会
廣瀬浩二郎
「企画展『さわる文字、さわる世界』の趣旨をめぐって」12:00~13:00 休憩・昼食 13:00~14:30 基調講演
和崎春日
「文化人類学とユニバーサル・ミュージアム」14:45~46:45 各地からの事例報告、意見交換
コーディネーター:平井京之介
パネリスト
染川香澄
「博物館でハンズ・オン ~ 経験、知識、思いがつながる ~」
大野照文
「博物館で学びが起こるとき ~ 起爆剤としての体験学習プログラム ~」
松川博一
「五感で楽しむ歴史展示への試み ~ 九州国立博物館の展示から ~」
森栗茂一
「におう、味わう、語りかけ、ふれあう。まちと博物館内外が融通する ~ 人と防災未来センターとNPOの協働から ~」16:45~17:30 総合討論
総括:横山廣子シンポジウム参加者
- 大野照文 京都大学総合博物館・教授
- 奥野花代子 神奈川県立生命の星・地球博物館・専門学芸員
- 染川香澄 ハンズ・オン プランニング代表
- 松川博一 九州国立博物館・研究員
- 三谷雅純 兵庫県立人と自然の博物館・主任研究員
- 森栗茂一 大阪外国語大学・教授
- 山本哲也 新潟県立歴史博物館・主任研究員
- 米田耕司 千葉県立美術館・前館長
- 和崎春日 名古屋大学大学院文学研究科・教授
- ミケール・ハドソン(米国)「アメリカン・プリンティング・ハウス・キャラハン・ミュージアム」ディレクター
- レベッカ・マックギニス(米国)メトロポリタン美術館アクセス・コーディネーター
- 平井京之介 国立民族学博物館・助教授
- 廣瀬浩二郎 国立民族学博物館・助手
- 横山廣子 国立民族学博物館・助教授
成果報告
ユニバーサル・ミュージアム(だれもが楽しめる博物館)という耳ざわりのいい概念に反対する人は少ないが、具体的に「だれも」をどうやって実現するのか。本シンポジウムでは米国からの2名のゲストを交え、各々のスタイルで「だれも」の可能性を追求する実践者の発表が相次いだ。シンポジウムは、本館の企画展「さわる文字、さわる世界」(3月9日~9月26日)の最後にして最大の関連イベントでもあった。この企画展を含め各博物館、個人が、いわば点として模索しているユニバーサルへの試みを線、そして面にしたいというのがシンポを計画した動機だった(点から線、面へ)。
シンポ1日目の議論の中心はバリアフリー。「だれも」の切り口として、これまで博物館から疎外されていた人々に注目することは重要である。見学の語に象徴される従来の博物館からもっとも縁遠い存在だったのが、「見る」ことができない視覚障害者。「どうせ博物館に行ってもつまらない」とあきらめていた視障者を館に呼び寄せ満足してもらう(遠から近、満へ)。シンポでは、視覚障害者へのサービスを中心に、障害者が来館しやすい環境作りについて意見交換がなされた。
シンポ2日目は五感がテーマとなった。視覚だけでなく他の四感を駆使することが、博物館の新たな楽しみ方の開拓につながる。シンポでは五感に訴えるユニークな展示手法、さまざまなワークショップの事例が紹介された。インターネットの普及で視覚情報が溢れる現在、わざわざ博物館を訪れる魅力は、受動的に「見る」のでなく、全身で「感じる」喜びなのではないか。
博物館とは多文化共生を実感する場である。今回のシンポでさまざまな気づきを共有した参加者たちがゆるやかに連帯しつつ、各分野で人間の可能性を引き出す活動を続ける(見から感、引へ)。本シンポジウムは、ユニバーサル社会をつくる大いなる築きのスタートとなる有意義なイベントであった。