ワークショップの趣旨

2年計画の1年目の本年度は、まず本プロジェクトの研究地域の柱の一つである極東ロシアとシベリア先住民の事例を取り上げる。シベリアの脱社会主義化の実態については、中央アジアやカフカス（コーカサス）のように武力紛争が起きていないために（一部トゥヴァとサハで暴力的な紛争が見られたが限定的であった）、マスメディアにもほとんど取り上げられず、その実態はほとんど知られていない。しかし、そこでも先住民系と移民系の対立、国営企業の崩壊に伴う先住民たちの生活基盤の崩壊など、他地域でも見られる現象が先鋭化した形で噴出している。しかも極東ロシアとシベリア先住民のコミュニティは生活レベルで脱社会主義を捉えるのに規模の点で調査しやすい。本ワークショップではシベリアでも北極圏のツンドラ地帯で、ソ連時代に産業化したトナカイ飼育に従事してきた先住民たちの脱社会主義化の実態解明に関する報告を行った。さらに、旧ソ連地域から２名の研究者を招待して（一人はロシア連邦構成共和国の一つであるサハ共和国の研究者、もう一人はソ連崩壊後独立したアルメニア共和国の研究者）、社会主義の経験者として内側見た脱社会主義化現象が報告され、討論が行われた。

プログラム

2002年2月9日（9 Feb. 2002）
社会主義時代・ポスト社会主義時代のトナカイ飼育
Reindeer breeding in socialist and post-socialist societies

報告1：
ヤクーチア農村調査の方法論と理論的可能性に関する問題提起　＜制度化された人・動物関係＞における家畜管理の諸相
A Trial of Forming Methodologies and Theoretical Potentialities in the field of research of Rural Yakutia, Siberia: "Institutionalized human-animal relationship" and husbandry management.［PDF］
高倉浩樹（東北大学東北アジア研究センター）／ Takakura, Hiroki (Tohoku university)

報告2：
シベリア・ネネツのトナカイ牧畜の実態からみたユーラシア先住民社会とトナカイ牧畜の比較研究に係わるいくつかの問題
Some problems concerning the comparative study of the reindeer breeding and indigenous societies in northern Eurasia: from the contemporary research of the Siberian Nenets reindeer breeders.［PDF］
吉田睦（千葉大学文学部）／ Yoshida, Atsushi (Chiba university)

報告3：
トナカイ飼育からサケ漁業へ：チュクチの事例から
From reindeer breeding to salmon fishing: from the contemporary research in Chukotka.
池谷和信（国立民族学博物館）／ Ikeya, Kazunobu (National Museum of Ethnology)

討論／Discussion：
〈コメンテーター〉渡邊日日（東京大学教養学部）、尾崎孝宏（鹿児島大学法文学部）／ Watanabe, Hibi (the University of Tokyo), Ozaki, Takahiro (Kagoshima university)
〈座長〉佐々木史郎（国立民族学博物館）／ Sasaki, Shiro (National Museum of Ethnology)

2002年2月10日（10 Feb. 2002）
ポスト社会主義の現状
Present situation in the post-socialist societies

報告4：
The theoretical and the methodological aspects of the contemporary ethnosocial researches of Siberian peoples: an example of the Republic Sakha (Yakutia).
イグナチイェヴァ、ヴァンダ（ロシア連邦サハ共和国科学アカデミー人文学研究所）／ Vanda Ignat'eva （Institute of Humanitarian Research, Sakha Republic）
〈座長〉高倉浩樹（東北大学東北アジア研究センター）／ Takakura, Hiroki (Tohoku university)

報告5：
Lenin as a Siberian Trickster acrobat［PDF］
アブラハミヤン、レヴェオン（北海道大学スラブ研究センター）／ Abrahamian, Levon (Hokkaido University)
〈座長〉井上紘一（北海道大学スラブ研究センター）／ Inoue, Koichi (Hokkaido university)

参加者／List of Patecipants

海外：
イグナチイェヴァ、ヴァンダ（ロシア連邦サハ共和国科学アカデミー人文学研究所）／IGNAT'VA, Vanda (Institute of Humanitarian Research, Sakha Republic, Russia)
アブラハミヤン、レヴェオン（北海道大学スラブ研究センター）／ABRAHAMIAN, Levon（Slavic Research Center, Hokkaido University）

館外：
井上紘一（北海道大学スラブ研究センター）／INOUE, Koichi（Slavic Research Center, Hokkaido University）
岡洋樹（東北大学東北アジア研究センター）／OKA, Hiroki (Center for Northeast Asian Studies, Tohoku University)
高倉浩樹（東北大学東北アジア研究センター）／TAKAKURA, Hiroki (Center for Northeast Asian Studies, Tohoku University)
伊賀上菜穂（東北大学東北アジア研究センター）／IGAUE, Naho (Center for Northeast Asian Studies, Tohoku University)
吉田睦（千葉大学文学部）／YOSHIDA, Atsushi (Faculty of Literature, Chiba University)
渡邊日日（東京大学教養学部）／WATANABE, Hibi (Collage of Arts and Sciences, the University of Tokyo)
吉田世津子（立正大学）／YOSHIDA, Setsuko (Rissho University)
折茂克哉（國學院大學大学院文学研究科）／ORIMO, Katsuya (Graduate School of Literature, Kokugakuin University)
松前もゆる（東京大学大学院総合文化研究科）／MATSUMAE, Moyuru (Graduate School of Arts and Sciences, the University of Tokyo)
菊田悠（東京大学大学院総合文化研究科）／KIKUTA, Haruka (Graduate School of Arts and Sciences, the University of Tokyo)
五十嵐徳子（天理大学）／IGARASHI, Noriko (Tenri University)
尾崎孝宏（鹿児島大学法文学部）／OZAKI, Takahiro (Faculty of Law and Literature, Kagoshima University)

館内：
佐々木史郎（民族学研究開発センター）／SASAKI, Shiro (National Museum of Ethnology)
岸上伸啓（先端民族学研究部）／KISHIGAMI, Nobuhiro (National Museum of Ethnology)
池谷和信（民族社会研究部）／IKEYA, Kazunobu (National Museum of Ethnology)
新免光比呂（民族社会研究部）／SHINMEN, Mitsuhiro (National Museum of Ethnology)
帯谷知可（地域研究企画交流センター）／OBIYA, Chika (National Museum of Ethnology)
西村幹也（総合研究大学院大学文化科学研究科）／NISHIMURA, Mikiya (Graduate School for Advanced Studies)