国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

ポスト社会主義圏における民族・地域社会の構造変動に関する人類学的研究――民族誌記述と社会モデル構築のための方法論的・比較論的考察 (2001-2002)

科学研究費補助金による研究プロジェクト|基盤研究(C) 代表者 佐々木史郎

研究プロジェクト一覧

趣旨

旧ソ連・東欧など冷戦時代に社会主義国家であった地域において、市場経済化・民営化が進められて10年がすぎた。しかしながら、経済状況はまだ不安定で、急進的イスラム主義の成長など民族運動・文化/宗教復興運動は先鋭化する兆しすら見せている。ポスト社会主義地域における諸問題は国際政治学や経済学のような社会を制度面から分析する分野では盛んに扱われてきたが、このような方法論では当該地域に暮らす人々の生活世界を微視的に記述し、分析することは難しい。本研究プロジェクトでは文化(社会)人類学的アプローチによって人々の生活世界を微視的に調査してそれを民族誌的に記述し、そこからポスト社会主義地域の諸問題を分析することをめざしている。
さまざまな運動や活動に従事する団体や個人、さらにそのネットワークを支える社会経済的基盤を解明することは、社会主義体制から転換した当該地域の現状を理解するにあたって最も基礎的かつ重要な課題である。本研究が目的とするのは、この課題を解決するために、当該地域における民族誌記述と社会モデル構築のための方法論的・比較論的考察を行うことである。それゆえ、まず生活世界の社会主義化そして脱社会主義化という共通の歴史的な経験のあり方を作業仮説として類型化し、次いでその仮説モデルの有効性について民族・地域社会の個別レベルで比較・検討したい。その上で、当該地域に生きる住民の生活世界を理解するための社会モデルの構築を行う予定である。
このプロジェクトで研究対象とする地域は、極東ロシア、シベリア、中央アジア、ヨーロッパロシアなど旧ソ連地域に留まらず、東ヨーロッパ、モンゴルなどいずれも旧社会主義国家で現在脱社会主義化に苦闘している地域である。