研究会・シンポジウム・学会などのお知らせ
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2013年3月17日(日)
国際シンポジウム"Exhibiting Cultures: Comparative Perspectives from Japan and Europe" -
和題:文化を展示すること―日本とヨーロッパの 遠近法を考える―
チラシダウンロード[PDF:3.24MB]- 日時:2013年3月17日(日) 10:00~17:00
- 場所:国立民族学博物館 第4セミナー室
- 主催:国立民族学博物館
- 使用言語:英語・日本語(同時通訳あり)
趣旨
本シンポジウムは、民族誌展示のあり方をめぐって、日本とヨーロッパで、それぞれの文化の展示に携わる研究者が対話するものである。ここでは、民族誌家/展示制作者の「文化の媒介者」としての役割に焦点をあてて、展示される文化と、展示を見る側の文化の関係を、文化の遠近法という視点から議論する。シンポジウムは、「日本におけるヨーロッパ展示」「ヨーロッパにおけるヨーロッパ展示」「ヨーロッパにおける日本展示」「日本における日本展示」を、それぞれ専門に手がける研究者が対話する形ですすめられる。民族学博物館の展示において、ヨーロッパ文化と日本文化は他者性において特有であり、共通の特殊性をもっている。それぞれの分野の専門研究者の対話は、民族学博物館のひとつの局面をあきらかにするだろう。
なお、本館のヨーロッパ展示場は2012年3月に公開された。このシンポジウムは、展示を企画した館内の研究者と海外からこれに協力した研究者が、公開して1年を経たヨーロッパ展示を、文化の遠近法という視点からレビューする機会になる。プログラム
9:30~10:00 受付 10:00~10:40 展示場案内(ヨーロッパ展示場) 10:40~10:50 館長挨拶 須藤健一 10:50~11:10 趣旨説明 森明子 11:10~11:50 森明子(国立民族学博物館)
(日本におけるヨーロッパ文化の展示)11:50~12:10 コメント: 藤原辰史(東京大学)
討論12:10~13:30 昼食・休憩 13:30~14:10 E・ティートマイヤー (Elisabeth Tietmeyer) (The Museum of European Cultures in Berlin)
(ヨーロッパにおけるヨーロッパ文化の展示)14:10~14:30 コメント: 三浦敦(埼玉大学)
討論14:30~15:10 I・ダニエルズ(Inge Daniels) (University of Oxford)
(ヨーロッパにおける日本文化の展示)15:10~15:30 コメント: G・モハーチ (Mohácsi Gergely)(慶應義塾大学)
討論15:30~15:50 休憩 15:50~17:00 コメント: 日高真吾(国立民族学博物館)
(日本における日本文化の展示)
総合討論17:00 閉会 参加申込
- E-mailまたは往復ハガキにて「国際シンポジウム 文化を展示すること―日本とヨーロッパの遠近法を考える 参加希望」と明記の上、 1.住所、 2.氏名(ふりがな)、 3.電話番号を記入し、下記までお申し込みください。
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〒 565-8511 吹田市千里万博公園10-1
国立民族学博物館・民族文化研究部・森研究室
E-mail:euro-anthro★idc.minpaku.ac.jp ※★を@に置き換えて送信ください 。 -
※お申し込みは3月8日(金)まで受け付ける予定ですが、定員に達した時点で締め切ります。
※携帯電話のメールによるお申し込みはご遠慮ください。
研究成果の概要
シンポジウムでは、みんぱくのヨーロッパ常設展示(2012年3月、全面改修し公開)、ベルリンのヨーロッパ諸文化博物館における新しい常設展示(2011年12月、初公開)、ロンドンのジェフリー博物館における日本の家に関する特別展(2011年、春公開)、みんぱくの日本常設展示(2013年3月、一部改修し公開予定)をとりあげた。それぞれの展示制作者は、完成した展示場写真を示しながら、展示のねらいと実際の展示制作にあたって遭遇した諸条件を報告し、さらに完成した展示を来館者がどのように受容したかについても明らかにした。また、当該展示が配置されている博物館の歴史的背景や社会的な位置づけについても説明した。こうして4つの報告は、相互に参照しながら議論する枠組みのなかに配置された。
議論には、展示制作に直接的に携わった研究者と、ヨーロッパ文化に造詣の深い文化人類学者、歴史学者が参加した。そこで、展示される文化と来館者の担っている文化の関係、常設展示と特別展示の使命、展示場を構成するストーリーと個々の標本に関する詳細情報のバランス、民族学博物館の役割などのテーマをめぐって、密度の濃い意見交換が行われた。また、自己の文化では気が付かない視点が異文化展示で生かされること、その一方で自己の文化の展示が外国人には難解になりうることも再認識された。展示トピックとしての食とその保存・廃棄や、展示における画像の可能性、来館者の体験を展示にフィードバックする実験などをめぐっても、さまざまな提案や意見が出された。
これらのテーマのそれぞれについて議論をつくす十分な時間はなかったが、いくつものテーマについてさまざまな視点が提示され、実験的な試みも紹介されて、そこから新たな可能性が開かれたことは、きわめて有意義であった。また、専門的な国際シンポジウムとしては、一般の参加希望者が多かったこと、そこに隣接分野の若手研究者が多く含まれていたことも、本シンポジウムで特筆すべき成果であった。