文化的アイデンティティと公共空間の創出
研究期間:2004.4-2005.3 / 研究領域:新しい人類科学の創造
代表者 竹沢尚一郎(民族文化研究部)
研究の目的
本研究は、グローバル化の進行と地域社会の解体が平行して実現されている現代的状況の中で、いかにして文化人類学・文化研究の存続・蘇生が可能かを考えることを目的とする。具体的には、グローバル化の中でのアイデンティティの葛藤下にある諸個人を、より開かれた帰属集団へと結びつけることで、かれらが歴史創出の主体として位置づけられることを支援するためのモデル化を行う。
研究成果の概要
今日の世界では、アイデンティティ政治や文化・民族の名による紛争の頻発、ムスリム女性のスカーフに端を発する世俗化論争など、「文化」が最大の問題として焦点化されていることが確認された。そこにおいては、文化人類学が行ってきた「他者」文化の研究という自己規定はもはや不十分であり、文化社会学、地域研究、政治思想、経済学などの諸科学とともに文化研究の再編成が必要であることが共通に認識された。
文化の諸問題の解決のために、現在世界の多くの地域でとられているのは文化を管理しようとすることであるが、このことは各自のアイデンティティの管理につながることから、各地で反発を招いている。むしろ、文化の諸問題の所在を明らかにし、解決に向かうために議論を行っていく場としての公共性の概念を検討していくことが必要であると思われる。
国際シンポジウム「宗教・世俗主義・公共性」 2005年3月24日