国立民族学博物館調査報告(Senri Ethnological Reports)
刊行の目的および意義
2002年は「日韓国民交流年」であった。この年を記念して、韓国国立民俗博物館と国立民族学博物館では、ソウルにおいて「近い隣の国、日本」展を、大阪において特別展「2002年ソウルスタイル―李さん一家の素顔のくらし」を共同で開催した。
この「2002年ソウルスタイル」展について、展示の基礎となる研究をはじめ、それらの研究をどのように展示するのか、展示を通してどのような教育がなされるのかなど、さまざまな試行錯誤と実践が行われ、これらについて総括しておきたいと考えた。
そこで、本館におけるさまざまな集会の場を通し、研究、展示、教育などの角度から、この展示をめぐる反省と評価を行った。本報告書は、これらの場において出された反省と評価を総括したものであり、以下の三部から構成されている。
一部は、研究フォーラム推進プログラムの一つとして2002年7月13日・14日に開催した国際シンポジウム「現代韓国社会における生活文化の研究とその方法:『2002年ソウルスタイル―李さん一家の素顔のくらし』展を通して」での発表と、その後に参加者から提出していただいたコメントである。
二部は、2002年10月16日に開催された第146回研究懇談会「展示の評価―2002年ソウルスタイル」の報告である。
三部は、共同研究「韓国現代生活文化の基礎的研究」において、展示終了後に開催した共同研究会での発表・報告である。
なお、本館と共同開催した韓国国立民俗博物館の「近い隣の国、日本」展についても、国際シンポジウムがソウルで開かれ、その日韓両国語による報告書『2002国際シンポジウム「近い隣の国、日本」―韓国における日本文化の表象』(国立民俗博物館、2002年12月)が刊行されている。この報告書とあわせて本報告書が、今後の日韓の博物館展示交流、文化交流の発展のために役立つことを願っている。
目次
……………… 朝倉敏夫・林史樹・金香来
プログラム
館長挨拶:シンポジウムに向けて
……………… 石毛直道
趣旨説明:生活文化と生活財調査
……………… 朝倉敏夫
〈発表〉
展示のモダニズム――特別展「2002年ソウルスタイル――李さん一家の素顔のくらし」を巡って
……………… 中西啓
韓国研究におけるモノ研究と生活財調査
……………… 岡田浩樹
韓国における生活文化研究と生活財生態学
……………… 周永河
アパート空間での「もの」配列を通した生活文化の解釈
……………… 李煕奉
消費文化の浸透と政策と人の選択――「李さん一家」展と離島の生活文化の比較から見えてくるもの
……………… 鈴木文子
文化的存在としての「もの」
博物館展示と関連して
……………… 金柄徹
〈コメント〉
文化展示とアフォーダンス――「ものが語る」というディスコースをめぐって
……………… 林史樹
展示における資料の悉皆的拡張と生活空間再現の可能性
……………… 笹原亮二
博物館の資料収集と展示を目的とした生活財調査の活用
……………… 金時徳
「2002年ソウルスタイル」展と韓国の生活文化史研究
……………… 林慶澤
家政学と生活文化研究の関係性
……………… 池倫映
生活財生態学と民間信仰研究
……………… 呉文仙
「2002年ソウルスタイル」展から得た教訓
……………… 李文雄
展示会の全体像について
……………… 朝倉敏夫
展示デザインについて
……………… 大野木啓人
ボランティア活動に参加して
……………… 黒田和男
ハングル教室に参加して
……………… 李昌勲
在日韓国人と「2002年ソウルスタイル」展
……………… 金昌代
大学「朝鮮文化基礎論」教育と「2002年ソウルスタイル」展
……………… 島村恭則
大学の韓国語教育と「2002年ソウルスタイル」展
……………… 金美善
観覧者が見た「2002年ソウルスタイル」展――女子大生の感想文から
……………… 金香来
図録を通して「2002年ソウルスタイル」を覗く
……………… 洪賢秀
「ワークシート」は、こうして生まれた
……………… 金相文
日韓共催展を終えて
……………… 吉本忍
……………… 朝倉敏夫