国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱっく 活用例「モンゴル文化にふれてみよう~『スーホの白い馬』から~」

高槻市立芥川小学校
「モンゴル文化にふれてみよう~『スーホの白い馬』から~」
2012年から運用を開始した「モンゴル」パック。
モンゴル遊牧民のくらしがまるごと体験できるような民族衣装や馬具・玩具、オプションの馬頭琴など、内容盛り沢山のパックですが、学校ではどんな授業で、どのように使用されているのでしょうか??
気になる活用事例を見学してきました!!
2015年1月24 日~ 2月4日
「モンゴル
 草原のかおりをたのしむ」
2年生4クラス(126 名)
国語、国際理解教育
国語の授業『スーホの白い馬』において、登場人物の気持ちを考えるだけでなく、モンゴルの文化について学ぶ。
また、それを導入とすることで、スムーズに国際理解教育につなげる。

国語『スーホの白い馬』5時間 → モンゴル学習週間 5時間(みんぱっく使用)
★「モンゴル」パックは1/28 ~ 2/4 のモンゴル学習週間に使用されました。

学習発表会(馬頭琴)
馬頭琴体験
モンゴル衣装体験
モンゴルパック見学
 
  モンゴルパック見学の様子
学習発表会
「みんぱっくを使用して、学習発表会で馬頭琴の音色を保護者のみなさまに披露!」
1月28日の学習発表会では、1年間の学習の成果を保護者の方に披露しました。いろんな国について学んだ事の代表として、モンゴルの楽器「馬頭琴」の音色を聞いてもらいました。はじめはなかなか音がでませんでしたが、教室で何度も練習してなんとか体育館でも聞こえる音色になりました。広い体育館で、きれいな音色を出すのはなかなかむずかしかったです。音を出していた子は「手がいたい。」というほど練習していました。
保護者の方に見えるように、イスの上に馬頭琴をおいて、1人が支えて、もう1人が弓を動かしました。
馬頭琴体験
「『スーホの白い馬』で学んだばかりの馬頭琴を、実際に弾きました!」

はじめて「馬頭琴」を見たこどもたちは「バイオリンと似ている!」「それは、スーホがつくったもの?」「どこが骨でどこが皮?」と興味津々でした。音を出してみると、「???」こどもたちの反応がなくなりました。もっと高い音が出ると想像していたようで、「先生の弾き方がわるいんちゃう?」と納得できない様子でした。そこで、インターネットの動画で馬頭琴の演奏を見ました。そして、弾き方を確認してもう一度音を出すと、「きれいになってきた!」とこどもたちも認める音色になりました。
後日、クラス全員が順番に音を出していきました。「最初は変な音がでたけど、練習していったらちょっといい音がでたからうれしかったです。」「馬頭琴はバイオリンとにているけど音がぜんぜんちがいます。」とそのときの様子を感想文に書いている子がいました。
2週間も借りられるので、休んでいた子も後日体験することができ、ありがたかったです。
クラス毎に体験させることで、みんなが触れられるように配慮しました。
2年生は全員で126人ですが、1クラスごとに順番にまわすことで、126人全員が馬頭琴を体験できました。
モンゴル衣装体験
「モンゴルの人はどのような衣服を着ているのでしょうか?実際に着てみました!」
机の上に、数種類あるモンゴル衣装をならべると「お~っきれい!」「これ着たいな。」とこどもたちの気持ちの盛り上がりがわかります。「今日は、モンゴル衣装を着て写真を撮ります。」と伝えると大盛り上がりです。モンゴル衣装を着てみると、すごくあたたかいことがわかりました。やはり体験は大切です。モンゴル衣装は、数種類入っているので、自分の好きな衣装を選ぶことができました。フレムと呼ばれるチョッキもあったので、デール(長着)の上に重ねて着ることもできました。帽子も大人気でした。
馬頭琴と同様に、126人全員がモンゴル衣装を体験できるようにクラスごとに回しました。
数種類ある衣装の中から、自分が着たいものを選び、班(3〜4人)ごとに記念撮影をすることで、こどもたちの気持ちを盛り上げました。
モンゴルパック見学
「モンゴル学習週間のしめくくりとして、モンゴル文化を感じるために、まだ見ていなかった馬具や玩具などのモノを自由に体験!」
20分~30分程度、自由に見学し、モンゴルのくらしを感じ取りました。
たくさんのモノがあるモンゴルパックをこどもたちにじっくり見てもらえるように、展示形式で見学しました。
子どもたちが自由に見学できるように、さわっていいもの、さわってはいけないものにはっきりと分けました。
モノをゆっくり見る事が好きな子がゆっくり見られるように、写真集や本は、人が集まる事ができるスペースを作って展示し、また、モノをゆっくり見る事が苦手な子も楽しめるように、ブーツをはくスペースやパズル、モンゴル将棋など体を動かして体験できるスペースも作りました。

自由に見学する前に、モノの簡単な説明を行うことで、こどもたちの期待感をぐっと高めました!
モノの取り扱いについて注意事項を話し、全てを自由に触れるようにはせず、触ってもいいものと触らないようにするものとを分けることで、モノを大切に扱うことの必要性を学べるようにしました。
事前にモノを分類して教室に配置することで、こどもたちが部屋に入った瞬間からワクワクするような仕組みにしました。
難しい立体パズルに挑戦中 先生に質問しながらいろいろなモノを体験中 モンゴルパック見学の部屋の様子
   ・・・みんぱっく運用担当者  ・・・先生
今回の「みんぱっく」使用の計画はどのように立てられましたか?
みんぱっく「モンゴル」を使用して授業を行うということをまず決め、夏頃に仮予約を行いました。
実際の具体的な使用計画は、パックを借りてきて中身を確認してから決めました。
中身を見てみると思っていた以上に内容量が多く、充実していたため、何度かに分けて少しずつこどもたちに見せる方が良いと考え、「モンゴル学習週間」として授業を計画しました。
主に国語の授業で使用されたのでしょうか?
『スーホの白い馬』ではパックオプションの馬頭琴を中心に使用し、パック本体は主に異文化理解として使用しました。国語の授業『スーホの白い馬』を導入とし、そこから国際理解・異文化理解の授業へとつなげる形になりました。
異文化理解として楽しい雰囲気でいろいろな国のことを知れたらいいなと考え、みんぱっくを使って楽しい授業になるように意識しました。
「モンゴル」パックの印象はいかがですか?
とにかく内容量が多いので、こどもたちがけんかにならずに好きなように体験できるところが良いと思いました。
先生からみて、こどもたちの反応はいかがでしたか?通常の授業時と何か違いはありましたか?
『スーホの白い馬』でスーホは馬頭琴を演奏するたびに、「白馬をころされたくやしさと白馬にのって草原を駆け回った楽しさを思い出す。」と学習していたので、馬頭琴に対する思い入れがあったところで、本物の馬頭琴を見る事ができたので、とても歓迎されました。本物は、魅力的です。
今後、みんぱっくのどのような使用方法が考えられますか?
3年生の授業では韓国の「三年とうげ」を行いますので、その時は韓国のパックが有効活用できるのではないかと考えています。
先生の説明の一言一言に「え~~!!」「知らないー!」「知ってるー!」などと口々に感想が飛び出しました。
事前に、『スーホの白い馬』の勉強をしていたこともあり、知っている言葉、聞いたことのある言葉に反応を示していたようです。
フィールドアルバムを使って、モンゴルのイメージである「草原」の写真を見せた後、都会の町並みの写真を見せると、知らなかった一面にとても興奮していました。先生の見せ方、話し方によってこどもたちのワクワク感がどんどん高まっていました。
説明が終わり、自由見学の時間になると、一目散にそれぞれの興味のあるものに飛びつき、じっくりとモノを観察していました。
将棋に興味のある子は、シャタル(モンゴル将棋)にすごく興味をもっていて、自分の興味と結びつけて見学している姿が印象的でした。
他には、自分たちの普段の生活には無い「馬具」を触って「くさい!」といって、触るだけで無く、臭いを嗅いだりし、全身を使って楽しんでいました。
シャタル(モンゴル将棋)に
夢中になる女の子たち
モンゴル語で書かれた日本のマンガ
順番に交代してブーツを体験 現地の写真(フィールドアルバム) 先生の説明に興味津々 先生と一緒にモンゴルの絵を見学
くつが二重になっていてびっくりしました。 でもはいてみたらあったかくて気持ちよかったです。
くつが二重になっていたから二重にするほどさむいんだなと思いました。
馬頭琴がひけてうれしかったです。
馬頭琴で力を、いれてひいたらいい音がでて、うれしかったです。
モンゴルの衣装や馬頭琴や見学で色いろなことがわかって1)馬頭琴が日本のギターに少しだけど似ていたからとてもびっくりしました。2)衣装がなんだか着物に似ていたから少しだけおどろきました。3)見学のとき、くつをはくときに二重のことがびっくりしました。モンゴルにもパズルやトランプがあって日本に似ていてモンゴルにすごくいってみたいと思いました。
日本のお金1円がコインだけど、モンゴルのお金は、千円札みたいに紙でできていたのでちょっとびっくりしました。「モンゴルと日本は似ているところもあるけど、ちがうところもあるんだ。」と思いました。
モンゴルの写真をみたらゲルだけじゃなくてマンションとか住宅街とかの写真がのっていたからびっくりしました。
モンゴルには都会があるって知らなかったから自分のくらしと全然ちがうと思っていたけれど都会があるって聞いてそんなにちがわないのかなと思いました。
今日見学できてうれしかったし、くつがはけてぼうしもかぶれてうれしかったです。いろんなものがさわれてうれしかったです。衣装がきれてうれしかったし馬頭琴がひけてうれしかったです。
※原文ママ(ひらがなを一部漢字に変換)
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「モンゴル」パックをはじめて見たときとても大きなスーツケースに入っていてその量の多さに驚きました。「これだけの量があれば、展示会ができるな。」と校内で一番広い多目的室に、馬具、玩具、写真などを展示しました。みんぱくに行かなくても、展示会ができるなんてお得です。こどもたちは、三日間もモンゴル体験ができたことを喜んでいました。「明日も、モンゴル体験だ。」とわくわくしながら寝たこともあったと教えてくれた子もいました。
先生に熱心に質問するこどもたちの様子

今回は、「モンゴル」パックを活用した授業の初めての見学となり、どのように使用されているのかとても楽しみでした。「モンゴル学習週間」の最終日を見学することができ、こどもたちのワクワクした姿をたくさん見ることができました。
こどもたちの感想を読むと、モンゴルと日本の似ているところ、違うところに気づいた子や、モンゴルの草原以外のことを知り、イメージが少し身近になった子もいて、それぞれの目線でモンゴルを感じ取ってくれたようです。こどもにとって、さわれること、体験できることは大切なことだなと思いました。
2週間の貸出期間の中で、学習発表会、国語、国際理解と1つの授業だけで無く、横断的に使用していただくことができ、「みんぱっく」は使い方次第で様々な授業に対応できるのだなと、あらためて感じました。
モンゴルパックは内容量がとても多いので、使用方法が難しいという声をいただいたこともありますが、今回のケースでは、内容量の多さが強みとなるような利用をしていただけたように思います。
こどもたちのモノに対する興味、知的探求心を直に感じ、実物の持つ力の大きさを実感しました。