国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

トランス・ボーダーの人類学

研究期間:2004.4-2006.3 / 研究領域:社会と文化の多元性 代表者 庄司博史(民族社会研究部)

研究プロジェクト一覧


| 研究の目的 | 研究の内容 | プロジェクトの歩み | 研究成果の概要 | 研究成果公表計画及び今後の展開 |
| 2006年度 | 2005年度 | 2004年度 |


研究の目的

グローバル化は量と速度において著しい人、モノ、情報、資本の移動をもたらし国民国家、民族といった近代がつくりあげた境界やその中で築かれてきた経済、社会機構や法制度を揺るがせてきた。日本における80年代後半以降のニューカマーの急増は、旧来の共同体の社会制度・慣習や価値体系などと衝突をおこしながら、移民側はもとより受け入れ社会においても制度や人々の意識の変容を促してきている。
現在まで日本ではこの問題にたいし、主に政治学、社会学などが、移民労働者や難民の国家間の流れというマクロな視点から、およびホスト社会での適応の際に生じる諸問題へのミクロな視点から関心を寄せ、社会にとって未経験の現象の解明および政策への寄与などにおいて成果をあげてきた。しかし西欧の大半の国家に見られるように、現在、多文化・多民族現象が長期化し、定着し始めつつある中で、問題への初期の関心が薄れ、緊張が再燃する可能性も否定できない。
本研究では、移民およびホスト社会のより安定的で恒常的な社会システム、人々の意識、文化面での共生への動きに着目し、その方向性を文化人類学的視点から解明することにより、今後の多文化・多民族共生社会の可能性をさぐることを目的としている。


研究の内容

1)グローバル化にともなうニューカマーのホスト社会への適応の実態、およびホスト社会とエスニックコミュニティーのさまざまな活動においてみられる対立・共生志向を文化的な共生の側面を重視しつつさぐる。

2)各地の多民族・多文化状況に対応してみられる多文化政策、住民運動、イデオロギーの相関関係に注目し、現在の多文化共生志向の特徴を明らかにする。特に民族やエスニック集団間の対立をあおるイデオロギーやエスノセントリズムの介入をおさえるイデオロギー(寛容教育・共生思想)のヨーロッパやその他の移民国家における出現と役割さらに各地への波及の過程をたどる。

3)人々のあいだにみられる多文化共生志向、受容態度あるいは共生的アイデンティティーの発現など意識の変容を政策、イデオロギーにかぎらず、現実の多民族・多文化状況さらにグローバル現象と関わりの深い情報化や物流の発展との関連において、その今日的現象としての特質を明らかにする。特に集団境界として象徴的な言語、宗教、文化表象である音楽などの国家、民族の境界をこえた交錯状況の出現とのかかわりを重視する。


プロジェクトの歩み

この研究プロジェクトは、これまで実施してきた以下のプロジェクトの研究テーマと関心を継承するとともに、これまでの研究を総括する目的で組織された。新たに立ち上がった機関研究の「社会と文化の多元性」領域において、グローバル社会における対立と共生の諸相をトランスボーダーという観点から研究する。

●重点研究「トランス・ボーダー・コンフリクトの研究」

1999年
・プレ・シンポジウム「グローバル時代のトランス・ボーダーの諸相」2000.2.28,29
・多言語研究プロジェクト・研究集会 2000.3.27

2000年
・研究集会 2000.10.16
・研究集会 2000.10.27
・第2回国際シンポジウム「紛争の海―北と南の水産資源とその管理をめぐって」2001.11.22-24

2001年
・研究集会 2001.7.10
・研究集会 2001.10.26
・国際シンポジウム「グローバル時代と内なる越境」2002.2.26-28

●機関研究「トランスボーダーの人類学」

2004年
・第1回研究会・第2回研究会・第3回研究会

2005年
・第1回研究会・公開フォーラム・第2回研究会


研究成果の概要

本機関研究は、当初から最終年度3月に開催した国際シンポジウムを最終的な研究成果発表のための場と位置づけており、研究プロジェクトの主旨に従い関連のあるテーマに関し、文化人類学の領域をこえた分野からの研究者を迎え、初年度から合計6度にわたる研究会、および一回の公開研究フォーラムを実施してきた。最終年度にはまとめの国際シンポジウムを開催した。研究会においては、主に社会学、法学の分野で、移民研究において先行しているテーマについて、発表してもらったほか、文化人類学的な観点からの移民研究を他分野の学者に提示し、移民問題に関し分野横断的な学術的交流をはかってきた。扱ったテーマは、外国人に対する住民意識、司法・行政通訳・翻訳、多文化共生社会と法制度、移民への母語教育、移民のトランスナショナリズム、難民と先住民問題、韓国の移民労働者、およびフィンランドの帰国者問題であった。また、公開研究フォーラムにおいては、外国人コミュニティ活動の調査、支援活動にかかわってきた研究者とともにNGO・行政関係者等現場での実践者が参加した。 実践者にとっては、研究者側からの理論、あるいは法制度的枠組みの提示、そして研究者にとってe地で予想以上にすすんで行われている支援事業などの紹介という面で活発な論議が展開された。最終年度の総括の国際シンポジウム「移民とともに変わる地域と国家」においては以上の研究会、フォーラムの議論において浮上したトピックを中心に、7つのセッションを設け発表および討議をおこなった。ここでは血統主義を国家理念の基盤としてきた点で共通点の多い日本、韓国、ドイツを機軸として、各国の移民問題の比較検討をおこなった。各国において、もはや移民を、国籍を根拠に外来者として排除するのは現実的ではなく、かれらを国家、社会に統合するための方策が各国で模索されつつある現状が明らかになった。


研究成果公表計画及び今後の展開

本機関研究は、上記のように最終年度の国際シンポジウムにむけ、研究会、フォーラムを数度にわたり開催したが、これらはホームページのにおいて通知し外部の研究者へのオブザーバー参加を可能にした。特に、公開フォーラム「多文化共生社会の形成をめざす実践と研究のために」では150人をこす参加があった。現在共催した多文化共生センターとフォーラムでの成果の公開方法について協議中である。

国際シンポジウム「移民とともに変わる地域と国家」(2007年3月26-28日)の成果は、セッション発表を中心に報告書として、本年度に刊行予定。

また、本機関研究の成果の一部として、メンバーを中心に、東大等との共催による国際シンポジウム"Transnational Migration in East Asia: A View from Japan"(May 31 Thursday- June 1 Friday, 2007,民博側代表・南真木人)(民博リーダシップ支援経費による)においても発表の予定であり、この報告書も英語により刊行予定である。
●国際シンポジウム「東アジアにおけるトランスナショナルな移住―比較の視点から見た日本」(2007年5月31-6月1日)


2006年度研究活動

研究成果概要
本年度は本機関研究の最終年度であるため、当初から計画にあったまとめのための国際シンポジウムを目標にした。そのため、いままでどおり準備としての研究会を以下のとおり開催した。
●国際シンポジウム「移民とともに変わる地域と国家」(2007年3月26-28日)

●第1回研究会
   日時 2006年11月27日(月)13時30分~18時30分
   場所 国立民族学博物館 4階 大演習室

●発表(1) 劉明基氏 (ユ・ミョンギ) (日本語)(慶北大学校人文大学考古人類学科教授・現在民博外国人研究員)「外国人労働者と韓国社会」 Foreign workers and Korean society
90年代以降の経済の国際化の進展にともない、外国人労働者の韓国国内への流入が続き、その数も増加している。外国人労働者はすでに韓国社会の経済活動の重要な一翼を担っているが、同時に従来から「単一民族社会」ともいわれる韓国社会にたいして外国人との共生関係をいかに築いていくかという課題をなげかけている。今回の発表では、韓国社会の外国人労働者の現状と対応を、韓国の外国人労働者の統計的推移を概観しつつ、日本の状況と比べながら考察する。おもな観点として、外国人労働者にたいする政府の政策、就労実態および労働条件、民族的・社会的差別や偏見、国際結婚と定住問題などをとりあげる予定である。

●発表(2) クリステル・ビョルクルンド氏 (Krister Bjorklund) (日本語)(フィンランド移民研究所研究員・現在民博外国人研究員)「フィンランド 移民送出国から受入れ国へ」 Finland’s transition from an emigration to immigration country
フィンランドは1980年代までは移民送出国であった。また厳しい移民制限により1980年代後半にいたっても他の先進国に見られるような多民族化の影響はみられなかった。しかし1990年代にはいると血統主義にもとづき旧ソ連からの“フィン系”インゲルマン人への門戸が開放された。その他難民などもくわえ、外国人の数は大きく増加しており、1990に比べ4倍に達する。現在フィンランドも高齢化と少子化の問題は深刻で、政府は今年、労働移民導入へと方針を転換した。と同時に多文化主義にもとづく移民統合政策を打ち出しているが、どのような結果をもたらすか不透明な部分は多い。

●討論 全員

グローバル化よる人口の流動化が世界中で活発化する中で、移民の移動はかつてそれが余り顕著ではなかった地域にまで拡大し、多様な形態をとりつつある。今回、発表は韓国、フィンランドをとりあげるが、韓国では現在、移住労働者問題、フィンランドでは、血統主義による旧フィン系民族の旧ソ連からの受入れが活発化している。これらは、いずれも両国にとっては、移民受入れ国への変化とかかわっており、同時にこれらの国が現在直面している、国家理念にかかわる問題である。一方では、これらはさまざまな点で日本との共通点を有する現象である。発表、および発表の後おこなわれた討議のなかで、これらは、各国において、将来にわたり重要性をますテーマであること、また日本との比較において多くの共通点が指摘されると同時に、大きく異なる部分も存在することがあきらかにされ、それらの解明が今後、移民政策において重要な鍵となるという点で一致をみた。

●2007年度国際シンポ「Transnational Migration in East Asia」の開催打ち合わせ(2006年10月25日)
機関研究「トランスボーダーの人類学」研究会では、来年度5-6月、3年にわたる研究成果の発表の一環として、東大等との共催でシンポジウム「Transnational Migration in East Asia」を計画している。これは、国際シンポとなる予定で、シンポの主旨の他、プログラム、招聘対象者など、多くの打ち合わせ事項が残されている。今回は、アメリカ側の主催予定者のひとりであるD.Heines氏をまじえ、実務的なレベルの打ち合わせが可能になったため、機関研究代表者庄司と当シンポ民博側代表予定である南が出席することになった。 上記シンポジウムに関して、2006年10月25日に東大で実施案について詳細にわたり協議した。最終的には、民博側の了承を得て決定されるが、機関研究代表者と民博側シンポ代表者は5月31日のシンポ第一日目を民博で開催し、それに関しては、基本的に場所、経費、スタッフの用意をする提案をおこなった。また、シンポ全日程のプログラム、参加者などについても基本的に合意した。成果に関して、民博は民博開催分については、SERで出版する可能性のあることを提案した。


2005年度研究活動

研究成果概要
本年度は、メンバーの研究テーマがいかに全体のプロジェクトにかかわるか、またメンバー全員それらを自らのテーマにいかせるかを討議した。

●第1回研究会
フィンランドの移民に対する母語教育の変遷について移民政策の進展とのかかわりにおいてのべた。そのひとつの争点となった移民の言語の扱いにおいて特に1999年"統合法"など移民の母語教育実現に積極的な意味をもった点に関心がよせられ、それらの導入にいたったイデオロギー、市民意識、ヨーロッパ統合政策などとの関連について討議がおこなわれた。
   日時 2005年7月16日(土) 13時30分~18時30分
   場所 国立民族学博物館 4階 大演習室

庄司博史「フィンランドの母語教育と移民言語政策」
フィンランドは北欧の移民先進国であるスエーデンに隣接しながら、外国人の流入により急速に多民族化したのはようやく1980年代後半からである。
しかしその後の移民への対応はおおきく進展しており、はやくも1990年代末には多文化主義を基本理念とする移民政策の基本方針をだした。今回の発表では、そのひとつの争点となった移民の言語の扱い、こどもたちの教育における問題と対応の中にその経緯をさぐる。同様に短期間に急速な多民族化を経験した日本との比較の観点からも考察したい。

●公開フォーラム「多文化共生社会の形成をめざす実践と研究のために」
進行中である多民族化にともない、さまざまな分野での「越境」によってもたらされる諸問題と取り組んできたNGOや行政とそれらを研究の対象としてきた研究者がそれぞれの分野での現状を概観し、これからの日本の多民族化にむけての方向性などを協議した。
   日時 2005年10月8-9日
   場所 国立民族学博物館 第5セミナー室

●第2回研究会
   日時 2005年12月9日(金) 13時30分~18時30分
   場所 国立民族学博物館 4階 大演習室

●発表(1) 13:30-15:30
トランスナショナリズムという用語がこれまでさまざまな学問分野でどのように用いられてきたかを整理し、その概念の変遷、定義、及び人類学的な移民研究でこの用語を使う有効性が説明された。さらに、討論ではトランスボーダー、トランスナショナリティとの異同、トランスナショナリズムの定義と要素について議論した。
<発表者>上杉富之 (成城大学文芸学部・大学院文学研究科)
<テーマ>人類学における「トランスボーダー研究」の位置-移民のトランスナショナリズム研究との比較から-
<要旨>
国境を越えた人の大量移動(=移民)がもたらす文化的・社会的諸問題の解明は、トランスボーダー研究を構想する上で最も大きな課題の一つだと思われる。しかし、人類学では、近代人類学の成立から1960年代後半に至るまでの「最盛期」、この種の問題は長らく想定外であった。が1980年代以降、いわゆるグローバル化にともなって国を越えた人の大量移動が顕著となり、人類学でも遅ればせながら移民問題に取り組み始めた。そうした中、1990年代半ば以降の人類学的移民研究において特に注目されているのが「トランスナショナリズム」(transnationalism:「越境」)という現象である。本発表では、人類学を中心として移民研究を振り返り、人類学においてトランスナショナリズム現象が注目されるようになった経緯を述べ、あわせて、トランスボーダー研究との関連について私見を述べたい。

●発表(2) 15:30-17:30
本来社会のマジョリティであった先住民が移民の流入によってマイノリティ化し、その経済的、政治的、文化的な優勢が脅かされる状況になって移民を排斥したブータンを事例に、エスノナショナリズム、移民による民主主義や多文化主義の要求といった問題をどのように考えていけばよいかが議論された。討論では、公的な場ではホスト社会の文化、言語、社会習慣に従うべきだとするリベラル多元主義、国民国家形成期の社会において多文化主義を導入することの不安定性などに関して議論した。
<発表者>南真木人(国立民族学博物館)
<テーマ>難民と先住民―ブータン難民問題の事例から
<要旨>
本発表では1990年にネパール系ブータン人が難民としてネパールへ流出し、現在も帰還していない「ブータン難民問題」を事例として、先住民としてのドゥルクパとナショナリズム、選択的な近代の導入と民主主義の相克、この問題をめぐる研究者による実験国家擁護説(民族主義や自然保護運動との親和性)について考える。ブータンでは国民文化を創ろうとするのが人口で移民に凌駕されそうな先住民(国王も属するドゥルクパ)であり、民主化を求めて反政府運動を起こしたのが移民及び、それ故に国外に追放された難民であった。市民権法の改訂によって移民を非合法化し、「固有の文化」を守って国民国家を形成しようとするブータンの動向を、フィジーの事例(橋本和也2005『ディアスポラと先住民』世界思想社)を参照しつつ考えたい。


2004年度研究活動

●第1回研究会
   日時 2004年9月18日(土) 13時~18時30分
   場所 国立民族学博物館 4階 第4演習室

研究会の趣旨(庄司博史)
   民博・機関研究「トランスボーダーの人類学」を始めるにあたって

報告
鈴木江理子 (株)現代文化研究所 情報企画室/一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程
「外国人集住地域にみる多文化社会の課題―集住地域における意識調査をもとに」
今後予測される日本における外国人人口とその比率の増加という観点からすれば、すでに一定以上の外国籍住民が集住している地域の実態は、より多くの外国人居住が見込まれるこれからの日本社会の1つの先行形態を示していると考えられる。それゆえ、そのような地域社会のあり方を検討することによって、私たちは、共生に向けた取組みへの多くの示唆をえることができるのではないであろうか。
このような問題意識から、居住する外国籍住民のエスニックが異なる集住地域(東京都豊島区、神奈川県大和市、群馬県伊勢崎市)を調査地域として、日本人住民に対して外国人に関する意識調査を行った(2001.11-12調査実施)。今回は、この調査結果をもとに、「日本人住民のいかなる要因」が外国人に対する意識を規定しているのか、また、「外国籍住民の居住の度合い」や「地域に居住する外国籍住民のエスニックの差異」が、日本人の意識にどのような影響を及ぼしているのかについて報告する。

質疑応答・討論 (司会: 庄司博史)
   トランスボーダーの人類学の展望と可能性

参加の申込み・お問い合わせ
   庄司博史(代表者) (電話 06-6878-8299) / 南真木人(事務局) (電話 06-6878-8298)

●第2回研究会
   日時 2004年11月6日(土) 13時30分~18時30分
   場所 国立民族学博物館 4階 第1演習室

報告
津田守 大阪外国語大学教授
「司法及び行政領域における社会サービスとしての通訳翻訳―「多言語共生社会」の実像と展望―」
「多文化共生」ということばは日本社会の実情ないしは将来への方向性を語る際に、よく使われる表現であるが、私はあえて「多言語共生」社会としての実相を示すことにより、そのあり方を探りたい。多言語性は、日本語を(まったく、あるいは十分には)解しない人々の登場する、「内なる国際化」の最前線である司法や行政の中においてとりわけ顕著である。具体的には、裁判所の刑事・民事・家事手続きのための法廷(あるいは調停室)、検察庁や警察での捜査(取調)の現場、刑事弁護や様々な法律相談の場面、拘置所・刑務所・少年鑑別所・保護観察所施設、それに入国管理局の入国審査室・収容施設などである。
本報告は、報告者自身による過去20年間ほどのいろいろな実務通訳翻訳経験を踏まえ、日本語だけではない、すなわち多様な言語が飛び交う司法(裁判・法務検察・警察・弁護を含む)及び行政(中央官庁及び地方自治体等)の世界に着目する。多言語間(Inter-lingual)のコミュニケーションがいかに図られているのか、いないのか。バイリンガルないしはマルティリンガルな対応はなされているのか。社会サービスとしての、つまり公益的業務としての認識は得られているのか。実務の実態や仕組みはどうなっているのか。多言語間通訳翻訳に、意義と問題点はあるのか。誰が通訳翻訳人となっているのか。そういった人々の資質や職業倫理は問われているのか。どこで誰によって、どのようなプログラムとして人材が育成されているのか。日本の社会、とりわけ政府・自治体等は、トランスボーダー化のますます進展する現代において、時代の流れと要請に取り組んでいけるのか。すべてに応えることはできないが、少なくともいくつかのキーになる問題提起をさせていただきたい。

質疑応答・討論

参加の申込み・お問い合わせ
   庄司博史(代表者) (電話 06-6878-8299) / 南真木人(事務局) (電話 06-6878-8298)

●第3回研究会
   日時 2004年12月28日(火) 13時30分~18時30分
   場所 国立民族学博物館 4階 大演習室

報告
近藤敦 九州産業大学経済学部教授
「多文化共生社会の法制度」
多文化共生社会に必要な法制度について、憲法レベル、法律レベル、条例レベルに分けて考察するものとする。今回は、とりわけ、憲法レベルを中心に、日本の憲法改正論における多文化共生社会の展望との関係、「文化」・「民族」・「外国人の権利保障」に関する諸外国の憲法・人権諸条約の規定を参照しながら、日本国憲法における外国人の権利保障の問題点について検討した。ドイツ、フランス、イギリス、オランダ、スウェーデン、アメリカ、カナダ、オーストラリアおよびニュージーランドと日本の状況を比較しながら、今後、日本において法制度の改革が必要な点を分析した。
そのうえで、「人種差別撤廃法要綱試案」、「多文化共生社会基本法の提言」、「外国人と民族的少数者の人権保障に関する基本法要綱試案」、「多民族国家日本の構想」および「移民国家日本の条件」といった、いくつかの法制度の改革提言について紹介・検討した

参加の申込み・お問い合わせ
   <庄司博史(代表者) (電話 06-6878-8299) / 南真木人(事務局) (電話 06-6878-8298)