国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

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2014年1月28日(火) ~1月29日(水)
国際ワークショップ「伝統知、記憶、情報、イメージの再収集と共有――民族誌資料を用いた協働カタログ制作の課題と展望」

 

趣旨

本ワークショップは、国立民族学博物館が所蔵する民族誌資料を活用する「フォーラム型情報ミュージアム構想(Info-forum Museum Project)」に関する課題と展望を明らかにすることを目的として開催する。

フォーラム型情報ミュージアムとは、民博がこれまで収集してきた民族誌資料や映像・音響資料などを対象とした、より深みのある資料情報化のための複数の国際共同研究と、その結果を一般の人々に公開するためのシステム作りとの2部で構成される。1部ではソースコミュニティの人々や連携研究機関の研究者から成る国際共同研究を組織し、新規に資料情報を収集する。2部では新たに得た情報を日本語以外の他の関連言語に翻訳し、かつ公開適正化を検討した上で、世界中のユーザーの閲覧と書き込みを可能とさせる、多方向的かつ互酬的なオンライン上の情報生成型データバンクを公開し運用することを目指している。

フォーラム型情報ミュージアム構想に類似する先行事例として、米国スミソニアン協会の極北研究所が管理する「sharing knowledge」や、カナダ北西海岸の先住民資料について22機関が情報提供する「Reciprocal Research Network」、米国南西部先住民ズニ博物館が主導する「Amidolanne」などがある。最後に挙げたズニ博物館の例では、連携機関として英国のケンブリッジ大学考古学・人類学博物館や北アリゾナ博物館、UCLA情報デザイン学部、米国スミソニアン協会などを擁し、世界各地の民族学博物館に散在したズニ資料の情報をズニ博物館にて一元管理化するプロジェクトを進めている。

これらに対して民博のフォーラム型情報ミュージアム構想は、対象とする民族集団が全世界を覆う点、資料収集活動が行われたのが過去40年以内であるため存命の資料制作者から直接意見を聞ける可能性が高い点、英語・日本語・現地語といった多言語を使用する点で、新規性と独創性がある。

ワークショップでは、「Amidolanne」を主導するズニ博物館(2012年に民博と学術協定締結)とその連携機関である北アリゾナ博物館(2014年に民博と学術協定締結予定)の館長を招聘し、現在進行形のプロジェクトの概要を発表してもらう。また秘匿性の高い宗教的知識や儀礼具などの公開適正についての見解を聞くために、ズニの宗教指導者も招聘する。対して日本からの話者は6名を予定している。例えば民博の野林厚志は、台湾原住民による民博での資料熟覧経験や、その後の地元での伝統復興の様子を情報遺産の記録化という観点から発表する。また、共催機関の北海道大学アイヌ・先住民研究センター准教授の山﨑幸治は、在外アイヌ資料調査で得た知見をアイヌの工芸家などにいかに還元・共有するかという観点からコメントをする予定である。

対象とする主な聞き手は民博教員であり、本ワークショップは一般公開しない。ただし民族学博物館および博物館人類学の最先端の議論を扱うため、館外研究者をメンバーに擁する民博の2つの機関研究と1つの共同研究を関連プロジェクトとして加えている。

プログラム

1月28日(火)【収蔵庫での資料熟覧】
  • 時間:9:00~17:00
  • 場所:国立民族学博物館 収蔵庫(1階)
    ※館長室にて、北アリゾナ博物館と民博との学術協定調印式(予定)
1月29日(水)【研究発表とディスカッション】 ※日英同時通訳あり
  • 時間:13:00~17:30
  • 場所:国立民族学博物館 第4セミナー室
13:00~13:10 挨拶「(仮題)国立民族学博物館の所蔵資料と今後の活用」
須藤健一(国立民族学博物館長)
13:10~13:20 趣旨説明
伊藤敦規(国立民族学博物館研究戦略センター助教)
13:20~13:40 発表1「民博におけるフォーラム型情報ミュージアムの構想」
岸上伸啓(国立民族学博物館副館長)
13:40~14:05 発表2「(仮題)台湾原住民に関する情報遺産の記録化」
野林厚志(国立民族学博物館研究戦略センター教授)
14:05~14:40 発表3「(仮題)ズニ博物館の協働カタログ制作計画」
ジム・イノート(ズニ博物館長[米国・ニューメキシコ州])
14:40~15:15 発表4「(仮題)ソースコミュニティの人々のための博物館資料熟覧」
オクテイビアス・シオゥテワ(宝飾品作家、ズニ宗教指導者[米国・ニューメキ シコ])
ジム・イノート(ズニ博物館長[米国・ニューメキシコ州])
15:15~15:35 休憩
15:35~16:10 発表5「(仮題)北アリゾナ博物館におけるソースコミュニティとの所蔵資料管理」
ロバート・ブルーニグ(北アリゾナ博物館長[米国・アリゾナ州])
16:10~16:25 コメント1「民族誌的知見の形成と共有の場としての情報ミュージアム」
福岡正太(国立民族学博物館文化資源研究センター准教授)
16:25~16:40 コメント2「在外アイヌ資料調査経験から」
山﨑幸治(北海道大学アイヌ・先住民研究センター准教授)
16:40~17:25 総合討論
17:25 ~17:30 閉会挨拶
伊藤敦規(国立民族学博物館研究戦略センター助教)