国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

パフォーミング・アーツと積極的共生

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テーマ区分:人間 5 マイノリティと多民族共存

代表者:寺田吉孝福岡正太

研究期間:2018.4-2022.3

 

プロジェクトの目的・内容

共生は、可視的な差別は概ね解消されているが、集団間の忌避感や偏見が残る「消極的な共生」と、お互いの文化的特性・差異を認め、尊敬の念を抱けるような「積極的な共生」に分けることができる。本プロジェクトは、音楽・芸能などに代表されるパフォーミング・アーツが「積極的な共生」を実現するために果たしうる役割と可能性を探ることを目的とする。ここで言うパフォーミング・アーツとは、音楽、舞踊、芸能、演劇はもとより博物館・美術館における体験型インスタレーションなど、身体を活動の基盤とする幅広い活動をさす。元来、パフォーミング・アーツは、身体を媒体とし視覚中心的な認識体系を超える(とは異なる)人間の知覚・思考形態に作用すると考えられ、人間の感情に大きな影響を与えることが報告されている。しかし、その一方で、パフォーミング・アーツのもつ感情に作用する力が、偏狭な国家主義、民族主義、性差別主義などの表現として利用されてきたことも事実である。そこで、本プロジェクトでは、パフォーミング・アーツが「積極的な共生」の達成に寄与する枠組みや条件を、具体的な事例の蓄積とそれらの比較検討から探りたい。
人間の集団は、その規模や地域に関わらず、民族、宗教、言語、政治的信条、経済階層、年齢、ジェンダー、セクシュアリティなど様々な指標(徴)により区別されており、そのように区別される集団間には、力の不均衡が存在することが多い。この中で劣位におかれた集団(マイノリティ)の文化や歴史は、彼らが居住する国家や地域などの公的な文化表象や教育から排除される傾向がある。そのため、マイノリティが音楽や芸能に自己表現や主張の場を求める例がこれまでに数多く報告されてきたが、パフォーミング・アーツと共生の関係をテーマにした研究は数少なく、また地域的にも限定的であった。本プロジェクトでは、世界各地で関連するプロジェクトを展開する研究者や活動家の参加をつのり、パフォーミング・アーツを「積極的な共生」実現に向けた具体的な方策としてとらえる総合的な研究を目指す。

 

期待される成果

世界各地で民族主義的、排他主義的な考えの台頭がみられる現代社会では、多様な集団の共生は最重要課題の一つであると考えられる。本プロジェクトは、これまでの共生に関する諸研究で軽視されてきたパフォーミング・アーツに焦点を当て、集団間の「積極的な共生」を達成するうえで果たしうる役割を同定することで、その糸口を具体的に示すことが期待されている。本プロジェクトの実施を通して国内外の研究機関やNGOなどと連携をはかり、当該テーマの研究を深め、国際シンポジウムで得た成果を国際的に共有することができる。

 

みんぱく公開講演会

2018年11月2日(金)
みんぱく公開講演会「音楽から考える共生社会」

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国際シンポジウム

2020年3月(延期)