国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱっく 活用例「幸せを作る国ブータン」

東京都立大田ろう学校 東京都立大田ろう学校
「幸せを作る国ブータン」
平成17年11月15日~
学年:高校2・3年生
パックの種類:「ブータンの学校生活
使用科目:現代社会、世界史
学習のねらい:
  ブータンの人びとの生活を理解する。(異文化理解)
  ブータンの国民総幸福量の考え方から先進諸国の諸問題を考える
 
大田ろう学校の社会科担当の加藤先生は、授業においてモノを使うことの重要性を常々感じていらっしゃる先生の一人です。
平成17年度は1年を通して計画的に6種類の「みんぱっく」を借りて、上手く年間の授業に取り込まれています。
毎回パックが届いて十分にその地域について下調べをし、生徒向けにパワーポイントで資料づくりをされます。
その中で、今回5パック目の「ブータン」を利用した授業をご紹介します。
(今回は11月15日と16日の2日間、2年生と3年生の授業を両方見せて頂きました。)
 
■ みんぱっくの利用
今年1年を通し6パック借りることになった経緯を先生に伺いました。
「もともと以前マンモス校に勤務していた際に、どうやったら授業に集中させられるか、という課題に直面し、モノを使って飽きない(楽しめる)授業をするという考えに至りました。
特に社会ではモノ授業は興味関心を高めるために重要です。
そこで、前年度から計画を考え、「みんぱっく」を取り入れることが学校で承認されました。」

■ 授業の流れ
2時間連続の授業の取り組みの中で、1時間目にまず「みんぱっく」に入っている衣装の試着など、体感し、
2時間目は先生の作成したパワーポイントの資料を使っての学習です。

1時間目
地理確認
まずは、世界地図で位置確認。
「ブータンってどこにある国?」
「中国とインドの間。(地図で指し示しながら)このあたりだね。
ヒマラヤ山脈があり、世界一高い山エベレスト山があります。」
 
衣装の試着
少人数なので、全員試着します。また、授業公開されていたので、他にもいろんな先生が参加されます。
男性・女性とも、順番に衣装を試着します。
どちらも、日本の着物ととてもよく似ています。
パワーポイント資料をみながら試着をしていくうちに、いろいろと疑問がわいてきます。
「男性の衣装のうしろに“はこひだ”をなぜ作るの?」
「なぜ胸元がゆったりしているのだろう・・?」
など。
生徒たちは一生懸命考えます。
「ゆったりしているのはそこにお弁当箱や、必要な物を色々入れて学校にいくんだよ」
そういうことも、実際にみんぱっくの物を使って、体感することで理解できるだけでなく、納得し、ずっと記憶に残ります。
 
2時間目
パワーポイント資料を使っての授業~「幸せを作る国ブータン」
“幸せ”とは何か?“豊かさ”とは何か?
“国民総幸福量(GNH)”の考え方など、資料をもとに授業は進みます。
少人数制なので、生徒たちと対話しながら丁寧な授業ができます。
 
 
■ 生徒たちの反応
今まで4つのパックを体感していますが、いずれも試着はとても楽しんでいるそうです。
見学に伺った日も、ブータンの衣装をみんなでどうやって着るのか、試行錯誤しながらとても楽しそうに試着していました。
 
■ 先生の感想
以前勤めていたマンモス校で、たくさんの生徒たちをどうやったら授業に集中させることができるか、ということを考え、モノを使って、楽しく、飽きない授業をすることが有効だと考えました。
社会の授業はモノを使って授業しやすいので、「みんぱっく」というものがあることを調べ、是非使いたいと思い昨年度中に年間計画をたて、6パック利用出来るよう、予算申請しました。
これが、もっとも大変で、注意すべき所でした。
また、各パックを使う際にその地域に関して納得させられる資料づくりをしなければならない訳ですが、これもまた、大変でした。

インターネットで色々調べ、何を題材に持ってくるかを決め、資料づくりを行いました。
生徒たちには、「いろいろあってかまわない」「みんな違っていてかまわない」というメッセージを込めて、異文化理解をして欲しいと思っています。 異文化理解、異文化受容は広く他者受容だと考えています。
偏見、差別、無理解が世界から少しでもなくなればと願っています。
そんな願いが込められる、すばらしい体験教材でした。

■ 見学の感想
今回は東京までパックを利用した授業を見学に行きました。
まず、授業の前に生徒が楽しく授業に取り組めるよう、オリジナルの資料づくりにとても時間をかけられ、モノを最大限に利用されていらっしゃるということを伺い、実際に授業を見学させて頂きました。
期待通り、おもしろく充実した授業で“みんぱっく”をスパイスとして上手く取り入れられていました。
今回授業で実際に生徒たちに触らせた“みんぱっく”のモノは衣装とそれに関連するモノのみです。
しかし、少人数制ということもあり、一人一人にきっちり体験させることができ、かえって良かったのではないかと感じました。
すでに4パックの利用を終え、5パック目の利用だったわけですが、毎回今回の“ブータン”のような授業構成で行われたそうです。
1時間目は衣装の試着。
2時間目にパワーポイントで作成した資料を使って関連国や地域について学習。
まず体験させ、その後資料をもとに学習していくことで、ただ教科書を見ながら知識として学習するよりはるかに生徒たちの中に残るモノがあると思われます。
今回の授業を見学し、先生にお話を伺い、ますますモノが介在する授業の重要性を感じました。
生徒たちのうれしそうな顔がとても印象的でした。

*学習をした教室の廊下には“みんぱく”や“みんぱっく”の資料を掲示して下さいました。