国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱっく 活用例「ブリコラージュ」

大阪市立聾学校
「ブリコラージュ」
この5月から貸出しが始まったばかりの「ブリコラージュ」パックを早速使ってくださった、大阪市立聾学校の図工の授業をご紹介します。
今回のパック利用は事前学習~校外学習~事後学習まで、一貫した流れの中で上手く利用されています。
○授業の流れ:
<事前学習>
国立民族学博物館に校外学習に行く前に、事前に「ブリコラージュ」パックを使って、特別展に行った際にスムーズに入っていけるよう、中身を見せました。
特に紙芝居やDVDの映像が役に立ちました。
各自、家から持ってきたいらない物を、先生が用意した段ボール箱にいったん集めます。
 
<校外学習>
10:30くらいからお昼までみっちり特別展「きのうよりワクワクしてきた。」 を楽しみます。特に学習テーマを設けずに楽しむことを目的として、見学しました。
展示場内はパックの中身の何百倍もすごい展示が一杯で、入館していきなり子どもたちは興奮状態です!
随所にあるDVDの映像がとてもおもしろいようで釘付けになっていました。
まず、目に飛び込んでくるのが「空き缶ハウス」。そして、順路通りキッチンからぐるっと1周。
太鼓など音の出る物にはとても反応しています。
また、新聞紙ドームや滑り台、夫婦の寝室など体感出来る物はかなり興味を引いたようで、全員順番を守り体感していました。
特別展示場の1階全体で1件の家の間取りの構成になっているので、生徒達はいつも自分たちの周りで繰り広げられている大人達の動き等を真似して見せてくれたりしました。
 
 
午後からは常設展示場へ。時間が余りとれないと言うことで、半分ほど見学して終了となりました。
午前も午後も好奇心一杯で、いろんなモノを見て、触って、体感してもらえたようです。

<事後学習1>
週に1度の図工の時間に「ブリコラージュな物作り」ということで、事前学習や校外学習で学んだり体感したことを実際に自分たちでやってみることになりました。
まずはみんぱくに行ったときのビデオをみんなで見ます。 → 思い出し作業
みんなとても反応が豊かで思い出しながらわいわいがやがや。
  ↓
「ブリコラージュパック」が登場!
紙芝居仕立てになっている“ブリコラージュ”のコンセプトシートを観ながら、内容物をさわり、特別展示場で見た物を更に思い出します。
コンセプトシートは、みんぱくの展示物を思い出すのに非常に役に立ったようです。
「何でできてるのかな?!」
「こんなもの、見た?!」
「みたみた~!」
「○○のところにあったよ!」
生徒達は、ほぼすべての物がどこにどのように展示されていたか正確に覚えていました。
すごい記憶力です!!
「モノにはいろんな可能性があるね。いろんな事ができるね!」
  ↓
実際にモノを選ぼう!
「みんなが持ってきた、いらない物で何が作れるかな?!」
先生が段ボールの中から取りだしたモノに対して手を挙げて元気に答えます。

ビール缶 → タイヤ!
豚肉が入っているトレー → 帽子?!などなど。

今日は3つくらい使いたいモノを選ぼう。(けんかにならず、仲良く選びました)
選び終わったら、ブリコラージュシートを配ります。
選んだ3つのモノを各自シートに記入して、今日の授業はここまでです。
 
 
<事後学習2>
前回各自で選んだモノをシートに書きました。それを見て前回の授業を思い出します。
自分の選んだモノを箱の中から取りだし、思い思いのモノを作ってみよう!

どういうモノを作ったか、どんな気持ちで作ったかなど、完成したモノについてワークシートに記入しよう。
まずは3つで、でもモノが足りないなと思う人は他にも箱の中から選んでO.K!

そして作業に取りかかります。
みんな、自分の選んだモノで何を作るか、先週の間に有る程度考えていたようです。
躊躇することなく、作り出しました。
次回には出来上がったモノをみんなの前で発表します!
 
<事後学習3>
前回の授業で作品はかなり出来上がりつつあり、形になってきました。
今回は開始後すぐに各自自分の作品を箱の中から取りだし、早速作業です!
わいわい、お隣の友達と話をしながらもしっかり手を動かしています。
中には、一人で3つも4つも作品を作った生徒もいました。
そして、発表の時間です。
一人ずつ、前に出て作品について説明します。どんなものを使って、何を作ったのか。
 
 
 
 
 

それぞれの個性がでて、すばらしい作品ばかりです!
全員が発表し終わり、最後に先生のまとめをし、もう一度DVDをみて授業終了です。
最終的には、学校内で作品を展示して、みんなに見てもらい、今回の長い取り組みが無事に終わりました。

○見学の感想
今回は学校側の好意で、事前学習から事後学習まで、一連の授業を見学させていただくことができました。
少人数制で、同行させて頂くにもとても良い環境で進みました。
5月から貸出しを開始したばかりの「ブリコラージュ」パックをどのように使って頂けるのか、非常に楽しみにしていました。
事前学習からきっちりと先生がブリコラージュパックの中身を使って、みんぱくへ来る前にワクワク感を高めて下さったようです。
校外学習に来て特別展示場へ入ったときは、みんな興奮状態でした!順番通り見学していましたが、音の出るモノや、映像のところでしばし立ち止まり、また、体感出来るスポットでは大いに楽しんでいました。
常設展示場内ではさらにいろんな疑問もわいていた子どももいました。
10時半くらいからお昼を挟んで1時40分まででしたが、有意義な時間を過ごしたのではないでしょうか?
後日図工の時間を3回見学しました。校外学習でいろいろなインスピレーションを受けたと思います。
そんなことを思い出しながら、自分たちの「ブリコラージュ」な物作りが始まりました。
見学しているこちらまでワクワクしてきます。
ありあわせの素材を使って、さて、どんなモノを生み出すのか!
さすが、先生の誘導もとってもお上手です!その甲斐あってか、子ども達は、本当にそれぞれに思い思いの作品を自由に作っていました。個性的でとても素敵な作品ばかりです。
自分たちの生活のどこかに関連したモノをみんな作っていました。

全員が一連の授業をとても楽しみながら行い、ペットボトルや空き缶など、あり合わせのもの、使わなくなったものに見事に新らしい命を吹き込みました!
それぞれの視点で、身の回りのいらないものあり合わせのものが生まれ変わるっていうことが、実際に自分たちで作ってみて少しわかってもらえたかな、とうれしい気持ちになりました。

○担当の先生の感想
ブリコラージュの概念にとらわれず、できるだけ多くのサンプル等を見せることにより、子どもたちの図画工作への期待をふくらませるように配慮した。タイヤのサンダルやアルミ缶のカバンなど実際に触ることができ子どもたちも非常に喜んでいた。事前学習に使った紙芝居も社会見学の活動に期待を持たせることができた。
図工の授業では子どもたちは自ら考えて色々な造形活動に挑戦してくれたと感じている。余り使った経験のないカッターを使ったりしながら素材を生かし、目的意識をしっかりと持ち一人一人が活動出来た。