国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

巻頭コラム

World Watching from Taipei  2002年7月29日刊行
野林厚志

● 原住民がゲームになった?!

 http://www.zct.com.tw/Chinese_version/banenn.html(中文繁体字)

台湾原住民の一つのグループであるルカイ族の伝説をモチーフにしたゲームが7月10日に台湾で販売された。ゲームのタイトルは「巴冷公主」。テーマは人間と蛇との間の恋愛劇だそうである。ルカイ族やその隣のパイワン族にとって、蛇は始祖伝説にも登場する大切な動物である。彼らの首長家の家屋や衣類には、百歩蛇(*)のモチーフがふんだんに使われている。

ゲーム会社の社長はルカイ族やパイワン族と近い関係にあるとされているプユマ族の出身で、ルカイ族の村で調べあげた伝承をもとに、ゲームのコンセプトを考えたとのこと。ゲームには、ルカイ族の他に同じ原住民の別のグループであるヤミ族や架空の矮黒人なる人々が登場し、活躍を繰り広げる。ゲームで用いられる薬草や武器、建築、服装や歌などもかなりリアルな仕上がりになっているとか。

これまでRPGやシミュレーションゲームといえば、中世ヨーロッパのドラゴン伝説や三国誌などが定番となっていたが、原住民文化もこうした世界に登場するようになった。ちょっと心配なのは、実在するエスニック・グループを登場人物にしている点。ゲームは特に若い人に受け入れられやすい反面、それがゲームなのか現実なのかを混乱させてしまうことにもなりかねない。ゲームに登場するルカイやヤミの人たちが台湾の若者の間に親しまれるのはいいことかもしれないが、ゲームと現実とは違うということも知ってもらう必要があるなと思ってしまった。

とりあえず、今度台湾に行ったときに買って、プレーしてみよう。

山ブタ大将

*-------------------- 百歩蛇:ひゃっぽだ(大辞林第二版から)--------------------*

ヘビの一種。全長1.5メートルに達する。胴は太く、頭部は三角状で吻端(ふんたん)が長く突出する。卵生。巨大な毒牙をもち、かまれると100歩行かないうちに死ぬというところからこの名がある。中国南部・海南島・台湾の山地に分布。