国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱくのオタカラ

今月の見てみんサイト  2003年11月12日刊行
野林厚志

● マニフェスト

今回の日本の総選挙では「マニフェスト」という言葉がクローズアップされたことは記憶に新しい。「マニフェスト」とはイタリア語(manifesto)で、宣言・声明書といった意味をもっている。現在では、政党の政権公約の意味で使うことが多く、何をいつまでにどれくらいやるか(具体的な施策、実施期限、数値目標)をはっきりさせることが求められることになる。

2001年、滞在していたイギリスでちょうど総選挙が行われ、労働党、保守党ともにそれぞれのマニフェストをだしていた。結果は労働党が政権を持続させることになった。労働党のマニフェストは2010年を公約実現のゴールと定めていた。つまり、それだけの期間、政権を維持し、国を引っ張っていくのだという意気込みを見せていたのである。

イギリス労働党のマニフェスト
<http://www.labour.org.uk/manifesto/>

かたや保守党のマニフェストはどうなったのか。
<http://www.conservatives.com/manifesto_index.cfm>

しっかりと存在していたのだが、そこにはこんな一文が。「それら(マニフェスト)はアーカイブとして参照の目的だけに提示しています」そして、有権者にあなたのマニフェストを作ってくださいというメッセージページを用意していたのには感心してしまった。

イギリスの2大政党のマニフェストの特徴は、ほとんど白黒の文字だらけの60数ページにおよぶ「これって読ませないために作っているの」と思ってしまうようなものでもなく、かといって、党首の写真集と間違ってしまうようなものでもなく、「お、これならちょっと読んでみるか」と思わせるような綺麗な作りになっている。やはりこういうことに慣れているなと感心した次第である。

ある政党の主宰の進退に問題が生じる度に選挙を行なってしまう国にマニフェストは果たして有意義なものなのだろうか、そして今回、政権をとれなかったわが国の政党のマニフェストが今後どう扱われるのか。素朴な疑問が残った「マニフェスト」選挙であった。

野林厚志