巻頭コラム
- World Watching from Guatemala 2003年12月15日刊行
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関雄二
10月中旬に2週間ほど、国際交流基金の派遣で、中米グァテマラの首都グァテマラ・シティに赴きました。目的は約30年前に開館した国立考古学民族学博物館の展示リニューアルのお手伝いです。とはいうものの、お手伝いにとどまらず、資料の保管から展示の方法や照明のあて方にいたる細かいところまで、私がこれまで自分の南米調査や博物館における実践経験から得たノウハウを集中的に伝えるというなかなかハードなものでした。
技術的なことよりも頭を悩ましたのは、多民族、多文化といった実情と、国民国家としてのグァテマラといった概念を矛盾なく博物館の展示で表現できるかといったことでした。時には、朝から晩までこの議論に時間を費やすこともあり、私にとっても博物館の役割をあらためて見つめなおすいい機会となりました。
グァテマラの国内の政治状況は複雑です。その要因の一つに多様な民族集団が存在するということがあげられます。グァテマラはスペイン系と先住民との混血であるラディーノ、マヤ系先住民、シンカ、ガリフナの人々から構成される多民族、多言語、多文化社会です。80年代には先住民を含む20万人もの人々が虐殺され、反政府ゲリラ活動も頻発し、内戦状態が続いていました。1996年にようやく平和協定が結ばれ、それをきっかけに「平和の文化」という概念が生まれました。 国内に存在する民族集団同士が、お互いの歴史、生活、言葉を認め合うというものです。そして国立考古学民族学博物館は、まさにその概念を展示で見せるという難しい役割を期待されているのです。
来年の1月上旬には一部の改修が終了する予定です。彼らがどんな答えを見つけだしたのか。次に訪問する機会を心待ちにしています。
関雄二(民族社会研究部助教授)
◆参考サイト
国際交流基金ホームページ
外務省ホームページ:グァテマラ共和国
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