巻頭コラム
- World Watching from Ulaanbaatar 2004年7月16日刊行
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野林厚志
● ヤギが増えた草原
先日、初めてモンゴルの地を訪れた。ナーダムとよばれるモンゴルをあげてのお祭りを7月中旬に控えていることもあり、あちらこちらで競馬の練習をする人々に出くわした。鞍をのせない裸馬にさっそうとまたがり、からだ全体を使って鞭をふるう子どもたちの姿の美しさ、逞しさに素直な感動を覚えた。
子どもたちの大特訓の横ではヒツジやヤギたちがのんびりと草をはんでいた。その姿を見て、ちょっとした違和感を覚えた。ヤギの数がやたら多いのである。西アジアの調査の時によく目にしたのは、多数のヒツジの中にヤギが数頭いるという群れだった。モンゴルでヤギの数が増えている背景にはカシミアが商品化されているということがある。ヤギの胸元からとれる一握りの毛がカシミアの原料となるために、カシミアの生産量をあげるためにはより多くのヤギを飼うことが必要とされているのである。衛星放送用のパラボラアンテナや太陽電池を備えているゲルも少なくなかった。市場経済がモンゴル草原の遊牧の姿を少しずつ変えていくことを実感した。
野林厚志(文化資源研究センター)
◆参考サイト
モンゴル政府観光局 日本支局
小長谷有紀(研究戦略センター)「モンゴル国における再生エネルギーの普及」に関する調査レポート