国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱくのオタカラ

チェチェメニ号  2005年6月16日刊行
飯田卓

新企画のトップバッターは、この遠洋航海・漁撈用のカヌーをおいてほかに考えられない。民博の収蔵品としては、固有名がついている点でも特殊だし、おそらくもっとも知名度が高いもののひとつではなかろうか。

このカヌーは、1975年の沖縄海洋博覧会の企画として、ミクロネシア・カロリン諸島のサタワル島から洋上を航海してきたものである。6名の乗組員たちが昼夜をとおして操縦し、47日間かかって3000kmの距離を走破した。

カヌーの全長は8メートル、マストの高さは7メートル。建物の天井よりもマストが高いので、展示場では船体が大きく傾いているが、結果として、帆に風を受けて荒波を乗り切る姿が再現されている。

航海のようすは、民博のビデオテーク「チェチェメニ号の航海」で視聴できる。航海中の調理や食事など、展示ではわからない情報も多い。また、劇場で公開された長編映画「チェチェメニ号の冒険」は、DVDとして販売されている。以下のサイトを参照されたい。
海工房 チェチェメニ号の冒険

飯田卓(文化資源研究センター准教授)

◆今月の「オタカラ」
標本番号:H4975 / 展示番号:OS0071 / 標本名:チェチェメニ号

[img] チェチェメニ号の全貌。カヌー本体に平行して1本の舷外浮材(フロート)をもつシングル・アウトリガー式カヌーである。逆風のときはフロートを風上に固定し、船の前後を入れ替えながらジグザグに航行(シャンティング)できる構造になっている。

 

[img] 舷外浮材。「浮材」と呼ばれてはいるが、実際に重要なのは重石としての役割で、強い風を受けたときに船体が倒れないように防ぐ。船体と浮材をつなぐプラットフォームは、火をおこす場所にもなる。

 

[img]船体は、複数の材を樹液で接着し、樹皮繊維で縫合して作られている。金属の釘やカスガイは用いていない。

 

[img]浮材とは反対側(風下側)に取り付けられたオプションのプラットフォーム。荷物置き場や寝室にもなる。

 

◆関連ページ
本館展示場(オセアニア展示)