みんぱくのオタカラ
- シベリアのタカラガイ 2005年12月15日刊行
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飯田卓
オタカラにちなんで、タカラガイの話を紹介しよう。
この種類の貝殻は、古くから、世界じゅうのいたるところで貨幣として用いられていた。沖縄県の先島諸島あたりのタカラガイは、アジア大陸まで運ばれていたらしい。このことは、柳田國男の民俗学の大前提になっている(『海上の道』)。
民博の展示物のなかでも、オセアニア展示やアフリカ展示のなかにタカラガイを用いた装飾品や威信財が少なくない。アフリカ地域のタカラガイ分布域はごく小さいが、大航海時代、インド洋のモルディヴ諸島からヨーロッパ商人がアフリカに大量のタカラガイをもたらすようになった。当時のヨーロッパ人は、西アフリカの黄金に見合った商品を他に思いつかなかったのだ。
だが、民博の展示物をよく探してみると、もっと意外なところでこの貝が見つかる。シベリア地域のシャーマンの衣装にタカラガイが使われていることは、民博で初めて知った。騎馬民族説で有名な江上波夫氏は、内陸アジアの遺跡から出土するタカラガイを中国の影響と考えているが(『人類学雑誌』47(9)、1932年)、民博にあるトゥーバの帽子飾りなどは、西方の文化圏を経由している可能性がある(民博教授佐々木史郎氏の意見)。
宝探しも謎解きも、スリルと困難をかねそなえたゲームである。民博のタカラガイ探しで、それを味わってみてほしい。
飯田卓(民族文化研究部)
◆今月の「オタカラ」
【上】標本番号:H65688 / 展示番号:TK0319 / 標本名:シャーマンの帽子〔複製〕
【下】標本番号:H88424 / 展示番号:TK0660 / 標本名:シャーマンの衣装〔複製〕
シャーマンの帽子〔複製〕 ブリヤート シベリア
シャーマンの衣装〔複製〕 トゥーバ シベリア◆関連ページ
本館展示場(中央・北アジア展示)
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