みんぱくのオタカラ
- 梓弓とイラタカ数珠 2007年3月14日刊行
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大森康宏
梓弓
古代より霊を招くために使われた巫具の一つである。梓弓は梓巫女(東北地方等に分布する巫女)が使用したことから付けられた名前である。カバノキ科の落葉高木の「梓」の木で作られた丸木の弓である。弓の端を結ぶ弦には麻糸や樹皮を使用、音を出すためには細い竹の棒を使用する。イタコは一心不乱になり竹の棒で弦をたたき、ビュンビュン音を出して霊などを梓弓に宿らせ、次にイタコ自身の体に憑依させて入神状態になるための橋渡しの役目をはたしている。主に津軽地方のイタコが使用していた。現在は、その姿はほとんど見る事はない。イラタカ数珠
伊良太加、苛高、最多角、刺高と呼ばれる。イタコの場合、3百余りの黒いムクロジの木の実をつなぎ合わせた長い数珠で、両側には雌雄の鹿の角、猪の牙、熊の爪、鷹の爪、狐の顎骨、狼等の野獣の骨がついている。また、天保銭・小銭・剣等が装飾されている。これらの物には憑き物のお祓い、悪魔祓い、虫封じ、魔除け、身体のおまじないの意味がある。必要に応じて単品で使用する場合がある。数珠全体を全身にも使用する。イタコの場合は修験道と同じように、読経や祈祷・口よせの際は両手で激しく上下にすり合わせる。高い音を出す。そしてその響きに神仏を乗り移す。大森康宏(民族文化研究部教授)
◆今月の「オタカラ」
【上】標本番号:H219274 / 標本名:梓弓
【下】標本番号:H219273 / 標本名:イラタカ数珠◆関連ページ
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