みんぱくのオタカラ
- マダガスカルの竹ハープ 2007年8月21日刊行
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飯田卓
竹筒の軸にそって、平行な切れめ2本を表面に刻み、切れめにはさまれた表皮を薄くそぎとる。そして、両端に小さな材を入れると、1本の弦になる。こうやって、竹筒のまわりに弦をいくつも切り出すと、音階の異なる音色を出すことができる。おまけに、竹筒の空洞が共鳴器となって、音の響きもよくなる。
竹ハープとでも呼ぶべきこの楽器(民族音楽学では筒型ツィターと呼ばれる)は、東南アジア大陸部や島嶼部、メラネシアなどで用いられてきた。民博も、各地で収集した竹ハープを所蔵している。マダガスカルのヴァリハは、そうした竹ハープのなかでも、もっとも西方から収集されたものである。マダガスカルは、アフリカ大陸の東に位置する、世界で4番めに大きな島である。
この楽器がいつ頃、誰によってマダガスカルにもたらされたのか、たしかなことはわからない。しかし、さまざまな知見を総合してみると、やはり東南アジア方面からインド洋をわたってもたらされたと考えるのが妥当だろう。マダガスカルに来た人びとは、インドネシア方面の言語と近縁な言語を話し、高度な航海術をもったオーストロネシアンだったようだ。オーストロネシアンとは何か。その歴史と現在については、9月13日から開催される「オセアニア大航海展」で紹介される予定である。
また、開催中の企画展「世界を集める」では、マダガスカルの人が日本の材料を用いて作ったヴァリハも展示している。どちらもあわせてご覧いただきたい。
飯田卓(研究戦略センター)
◆今月の「オタカラ」
【上】標本番号:H205807 / 標本名:マダガスカルの竹ハープ
【下】標本番号:H203343 / 標本名:日本の材料で作ったヴァリハ
針金製の弦を用いることは、マダガスカルでも多い。
木ネジで弦を固定するのは、製作者の工夫。◆関連ページ
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