国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

巻頭コラム

開館30周年記念国際シンポジウム「オセアニアの偉大なる航海者達」を開催  2007年11月7日刊行
印東道子

民博開館30周年記念特別展示「オセアニア大航海展」と連動させた形で、9月22~23日に国際シンポジウムを民博講堂にて行いました。特別展示の開幕と同時並行で準備を進めてきたので、大変な思いをしましたが、連日120人を越える熱心な方々にお越しいただき、あらためて大海原を航海した人たちへの関心の高さを知って、報われた思いがしています。

シンポジウムは二部構成で行われました。まず石毛名誉教授の基調講演は、民博の開館時のオセアニア展示の様子や、常設展示場の中央に展示されているチェチェメニ号が、どのようないきさつで民博にくることになったのかというお話で、開館時の活気や苦労などがしのばれました。

それに続いて、オセアニアへどのように人間が拡散したのか、人間の特徴や言語、考古学といった側面からの最新の研究成果が発表されました。一日目の最後には、上記チェチェメニ号が、ミクロネシアのサタワル島から沖縄へと航海した様子の記録映画が上映されました。実際にチェチェメニ号の伴走船に乗り組んだ門田修氏の話も迫力がありましたが、映像は30年たってもなおわくわくするものでした。門田氏の写真は、特別展の解説書である『オセアニア:海の人類大移動』(昭和堂)にも使わせて頂き、航海するチェチェメニ号が表紙を飾っています。
(→解説書:http://www.minpaku.ac.jp/museum/showcase/publication/special/20070913

今回、メディアの関心を最もひいた発表は、オークランド大学(NZ)のリサ・マティスー=スミス准教授のDNA研究でした。オセアニアの動物(犬、ブタ、ニワトリ、ネズミ)は人間とともに拡散したので、そのDNA分析をすれば、人間の移動の様子もたどれます。これまで、フィリピンからブタをつれて来たと考えられてきたのですが、DNAからはインドネシアのブタがポリネシアまで持ち込まれたことがわかりました。

後半では、オセアニアの航海術に焦点を合わせた発表が行われ、ミクロネシアの航海術の他、ヤップ島の石貨を竹製の大きな筏でパラオから運んだ様子なども紹介されました。海とともに生きながら、海を巧みに利用したオセアニアの人々の知識の深さに心うたれた二日間でした。

特別展示『オセアニア大航海展』は、12月11日まで開催されています。スタードーム(ミニプラネタリウム)では、実際にミクロネシアでの航海を疑似体験できますよ!

印東道子(民族社会研究部)

◆関連ウェブサイト
国際シンポジウム「オセアニアの偉大なる航海者達」
特別展の解説書『オセアニア:海の人類大移動』