みんぱくのオタカラ
- ひょうたん笛 2008年4月16日刊行
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陳天璽
タイ族やイ族など中国西南地区の少数民族に愛用されている管楽器。葫蘆絲(フルス)と呼ばれている。これは、中華人民共和国西盟ワ族自治県リス郷打落村で収集したもの。白キジの羽が4本付いており見た目にも愛らしい一品。ひょうたんの部分を胴とし、竹を管とする。ひょうたんに直接ついている部分が吹き口。音はやわらかく、雅楽の笙に似ている。うっとりさせられる音色は、愛の伝達にもつかわれた。かつて、タイ族の男性は、自分が想いを寄せる女性に愛を伝えるため、彼女が振り向いてくれるまで夜じゅうフルスを演奏し続けたそうだ。心打たれた女性は口琴でその愛に応えた。そんなロマンチックな様子は、唐代の樊綽が残した『蛮書』にも「少年子弟、夜巷に遊び、瓢箪笙あるいは木の葉を吹きて、情を音に託し、呼応しあう」と記されている。この小さな楽器が、人々の愛を繋ぐ大きな役目を担ってきたのだ。いつもはみんぱくの収蔵庫で静かに眠っているが、2008年3月13日から6月3日まで行われている開館30周年記念特別展「深奥的中国―少数民族の暮らしと工芸」では、2階の楽器コナーにおいて展示されるので、お見逃しなく。
その時は、ぜひ愛の語りをイメージすることもお忘れなく。陳天璽(先端人類科学研究部)
◆今月の「オタカラ」 標本番号:H0236824 / 標本名:葫蘆絲(フルス)
※開館30周年記念特別展「深奥的中国―少数民族の暮らしと工芸」にて公開◆関連ページ
開館30周年記念特別展「深奥的中国―少数民族の暮らしと工芸」
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