みんぱくのオタカラ
- たかが模型、されど模型… 2008年7月17日刊行
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笹原亮二
民博では、展示場のあちこちに、大型の家の模型が展示されている。膨大な展示物に紛れて気に留めない人も多いかも知れないが、この模型、なかなかあなどれない。
例えば、日本展示場の合掌造りの模型。1/10で作られたこの模型は、屋根が一部カットされて中の構造がわかるようになっているが、おもしろさは実はそこにあるのではない。この模型は、合掌造りの伝統的な「あるべき姿」を示したものではなく、現存の家の様子を、昭和49年(1974)11月頃という時期を限定して忠実に再現していて、その意味では、ある時代のある家の詳細な生活記録、民俗誌となっている。そこで、改めてこの模型を見てみると、軒先には、今では珍しい二層式の洗濯機、使いかけの洗剤の箱、清酒やビールの空きケースなどが雑然と置かれていて、この家の生活を彷彿とさせる。それ以外にも、よく見ると、様々なものが目に飛び込んできて飽きることはない。因みに、この家は当時民宿を営んでいて、模型にもその看板が掲げてある。現地では今も営業しているらしい。模型では、母屋の傍らに、客にふるまうコイのものか、上に網を載せた生け簀らしきものが見える。コイといえば、軒下の池には泳ぎ回るコイも再現してあるという噂があるが、私は未だ確認できていない。そんな「都市伝説」まがいの話が生まれるところも、明らかに模型の域を超えている。たかが模型、されど模型、決してあなどることなかれ
笹原亮二(民族文化研究部)
◆今月の「オタカラ」
標本番号:HI0563 / 標本名:合掌造り 富山県南砺波市相倉
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