国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

巻頭コラム

World Watching from Taipei  2009年6月17日刊行
吉田憲司

● 台湾の国立台北芸術大学との間で学術交流協定締結

2009年5月15日、民博と台湾の国立台北芸術大学の間で、学術交流協定が結ばれた。須藤館長、小林繁樹文化資源研究センター長とともに、私もその調印式に参列した。私自身にとって、そして国立台北芸術大学の友人たちにとって、長年の希望が実現した瞬間であった。

国立台北芸術大学は、1982年に国立芸術学院として創設され、2001年に現在の名称に改称した、比較的新しい大学であるが、台湾における芸術教育・研究の最高学府として位置づけられている。2001年の段階で、文化資源学院(文化資源学部)が設置され、そのもとに博物館研究所(博物館研究専攻)も設けられている。以来、同大学は、台湾における博物館学研究の中核拠点となってきた。台湾では、今、博物館ブームとでも言うべき現象が起き、博物館の新設や拡充が相次いでいるが、国立台北芸術大学は、今後も、台湾における芸術研究・教育とともに、博物館学の研究・教育拠点として、ますます重要な役割を果たしていくと考えられる。

国立台北芸術大学は、その創設の段階から民博の活動を注視してきたといい、同大学関係者は公的・私的を問わず継続的に民博に来館している。さらに、2004年に民博に文化資源研究センタ―が設置されると、同じく「文化資源」を名のる学院をもつというところから、その活動を注意深く見守り、2007年の民博開館30周年記念のシンポジウム「文化資源という思想」には、複数の同大学関係者が来聴した。同年12月、私が同大学主催の「文化資源学シンポジウム」の基調講演者として招聘された折、民博との将来に向けた交流協定の締結が提案されたのであった。

協定自体は、今後の5年間の一般的な学術協力をうたうものである。その一方で、具体的な協力案件の希望も表明されている。まず、2009年度秋に、1週間程度の、博物館学関係ワークショップを台北芸術大学にて民博と共同で開催することが計画されている。その後も、毎年、もしくは隔年で、ワークショップが予定されており、民博としては、同様の協力をおこなうことが期待されている。

一方、民博の側は、外国人研究員(客員教員)の制度を用いて、同大学の教員を受け入れ、本館での共同研究を促進することが想定される。また、民博において博物館学に関連する国際シンポジウムを開催する際、同大学関係者の参加をあおぐことも多くなるだろう。

こうした交流を通じて、民博と国立台北芸術大学の間で、博物館学に関する知識・情報・経験の共有化を進めることは、台湾における博物館学研究・博物館文化の振興に大きく寄与するものと思われる。また、民博にとっても、台湾における博物館の研究ならびに台湾を対象とした文化一般の研究を一層深化させるものである。大学共同利用機関としての民博の使命を十全に発揮する上からも、今回の交流協定は重要な意義をもっている。

吉田憲司(文化資源研究センター)

◆関連ウェブサイト
国立台北芸術大学(台湾)ホームページ
国立台北芸術大学(台湾)と学術協力
外務省ホームページ