みんぱくのオタカラ
- アブラデ・グローヴァー「王さまのお練り」 2009年6月17日刊行
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川口幸也
アブラデ・グローヴァー(1934-)は、独立後のガーナを代表する画家である。クマシの大学で美術を学んだあと、同校で長く後進の指導にあたり、のちには美術学部長も務めた。この間、1960年代から70年代にかけてはイギリスとアメリカに留学しており、欧米で開かれた国際美術展に招かれたことも一度や二度ではない。現在は公職から退き、首都のアクラで絵を描きながら画廊を営んでいる。
グローヴァーは、市場やお祭り、デモ行進、あるいはイスラム教のモスクといった、人が大勢集まる場所やシーンを好んで描くことで知られている。本人によれば、群衆から湧き上がってくる精神的なエネルギーを掬いとってカンヴァスに表現したいのだという。
ガーナの古都クマシはアシャンティ王国の都として有名で、いまも王様の存在がさまざまな面で人びとの生活の大きな支えとなっている。この絵は、お祭りのおりに王様がクマシの街なかを練り歩き、その周りを無数の人が取り巻いている様子を描いたものである。じっと見ていると、王様を敬愛する民衆の熱気が伝わってくる。
川口幸也(文化資源研究センター)
◆今月の「オタカラ」
標本番号:H0205126 / 標本名:王さまのお練り
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