みんぱくのオタカラ
- トーテムポール 2009年10月14日刊行
-
岸上伸啓
北アメリカの北西海岸先住民の文化を象徴するもののひとつは、巨大なトーテムポールである。それは、ビーバーやワタリガラスなどの家族の紋章を彫り込んだレッド・シーダー(ヒノキ科)の巨木柱であり、現地では、ポールと呼ばれている。
ポールには、伝承や祖先の功績を記録に残すための記念柱、死者のために建てる墓柱、家の入り口に立てる入口柱、家内の柱である家柱などがある。ヨーロッパ人と接触する以前にも作られていたが、巨大化したのは、ラッコの毛皮交易などにより鉄器などが先住民の手に容易に入るようになった19世紀以降のことであった。
現在でも、先住民は祖先を記念するため、また博物館やコレクターに売るためにポールを製作しているが、製作者が少ない上に、材料の巨木を手に入れることが困難になりつつある。みんぱくの常設展示場には3本のポールが、屋外には1本のポールが展示されている。同様なポールをあらたに製作するとすれば、驚くほどの時間と資金を必要とする。まさにみんぱくのお宝である。
岸上伸啓(先端人類科学研究部)
◆今月の「オタカラ」
標本番号:H34617 / 標本名:儀礼用家屋の正面飾り(ハウスポスト)ハイダ、1978年製作
カエルの紋章を彫った家柱。
※特別展「自然のこえ 命のかたち―カナダ先住民の生みだす美」にて展示中◆関連ページ
特別展「自然のこえ 命のかたち―カナダ先住民の生みだす美」
配信されたみんぱくe-newsはこちら powered by