みんぱくのオタカラ
- 鉢 2011年6月17日刊行
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平井京之介
朝、東南アジアの仏教僧は托鉢に出る。托鉢とは、鉢を携えて町や村を歩き、食を乞うことだ。俗人の施しにたいし、僧は礼はしないが、代わりに経を読んで祝福する。
僧には食事のルールが2つある。ひとつは、食事を午前中にすませること。以後は、コーヒーやタバコで空腹をまぎらわすしかない。もうひとつは、豚肉を含め、托鉢で受けたものは何でも食べること。ただし、僧のほうから食べたいものをリクエストしてはいけない。
僧にとって托鉢とは、大切な修行のひとつである。食欲に支配されないとともに、特定の食べ物を食べられないことから生ずる苦しみから離れることを学ぶ。また、他者からの布施によっていのちを与えられていることを実感する契機でもある。
この鉢は、わたしが2001年にヴィエンチャン郊外で出家したとき、師匠である僧からいただいたものだ。ちなみに、弟子が師から奥義を伝え受けることを「衣鉢を継ぐ」というが、この表現は僧が師匠から袈裟と鉢を授かることに由来するらしい。
平井京之介(民族文化研究部准教授)
◆今月の「オタカラ」
標本番号:O-761 / 標本名:托鉢用鉢[ラオス人民民主共和国 ヴィエンチャン 2001年<収集>]
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