みんぱくのオタカラ
- 肉の調理専用のまな板と包丁 2013年1月18日刊行
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宇田川妙子
イタリアのみならずヨーロッパでは、調理の際、まな板はあまり使われない。私もイタリアで生活をし始めたころ、女性たちが、ジャガイモなどの野菜を、まな板を使わずに空中で器用に切っている姿に、ちょっと驚いたことがある。日常的な料理で野菜の下準備といえば、皮をむいたり、いくつかに切り分けたりするだけで、千切りや輪切りのような繊細な切り方はあまりないせいだろう。そのせいかナイフも、調理用よりも食事用のものが代用されることが多い。
しかし、そんな彼女たちも、肉を扱う際にはまな板と専用の包丁を取り出す。肉料理には、肉だけでなく骨を切ったり、筋を叩いたり、ひき肉にしたりなどの作業が必要だからだ。
もちろん現在では、肉屋ですでにこうした処理をすませた肉を購入することが多くなり、若い女性たちを中心にこれらの調理具を使うことは少なくなってきた。ただし、復活祭などの祝祭時には、肉料理は依然として女性たちの腕の見せ所であり、その時期になると、バン、バンという、肉を切ったり叩いたりする音があちこちの台所から響いてくる。肉料理専用のまな板と包丁は、今でも彼女たちの必需品なのである。
宇田川妙子(民族社会研究部准教授)
◆今月の「オタカラ」
【上】標本番号:H0161348/資料名:肉切り用まな板
【下】標本番号:H0158217/資料名:肉切り包丁◆関連ページ
新展示フォーラム「やっぱりヨーロッパ―春のみんぱくフォーラム2013」(2013年1月5日~3月23日)
新ヨーロッパ展示
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