巻頭コラム
- World Watching from Japan and Korea 2014年1月17日刊行
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朝倉敏夫
● 和食とキムジャン
12月に、日本の「和食」とともに韓国の「キムジャン文化」が、ユネスコ無形文化遺産に登録された。この秋、韓国で行われたキムチに関する2回のシンポジウムに招かれた私としては、両者がともに登録されてホッとしている。
一つのシンポジウムは、韓国文化財保護財団主催により「キムチとキムジャン文化」というテーマで行われた、「2013ユネスコ無形遺産諮問機構(NGO)国際シンポジウム」であった。そこで私は「サハリンのキムチ」と題して、海外コリアンにおけるキムチの事例を紹介し、あわせて1997年11月に行われたサッカーのワールドカップ、アジア最終予選で韓国の応援団が「フランスに一緒に行こう」という横断幕をだして日本チームを応援したことを引き合いにだし、キムジャン文化が和食とともに登録されるようエールを送った。もう一つは、韓国食品開発研究院に2010年に付設された世界キムチ研究所が主催し、「キムチ、キムジャン文化の人文学的理解」を目指した、「2013第1回キムチ学(Kimchiology)シンポジウム」であった。ここでは私は「日本の漬け物と韓国のキムチ」と題して、日本のキムチについて紹介し、キムチが文化資源として研究されることを提示した。
韓国の「キムチとキムジャン文化」は、最終決定を前にしてユネスコ側から「キムチという特定の食べ物と認識されて商業的に利用され、無形文化遺産登録制度の本質をゆがめないように」との要請から、「韓国のキムジャン文化」として登録された。キムジャンは、冬が近づくと家族や地域住民がともに大量にキムチを漬け込み分かち合うという冬の風物詩であり、韓国人がアイデンティティを確認し、家族や隣人との絆を深める文化である。和食もまた、家族やコミュニティーの結びつきを強める社会的慣習としての食文化ということが、登録の大きな要因であったという。
和食が「おもてなし」の心であるなら、キムジャンは「わかちあい」の心である。日韓関係が取りざたされる今、私たちはともにこの二つの心をもう一度考えてみたい。
朝倉敏夫(文化資源研究センター教授)
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