国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

巻頭コラム

「ジョージ・ブラウン・コレクション」を地図にプロットする  2014年10月1日刊行
山本泰則

今年6月末に「ジョージ・ブラウン・コレクション・データベース」(日本語版)をインターネットに公開した。このコレクションはジョージ・ブラウンが、19世紀後半から20世紀初頭にかけて南太平洋の島々で収集した漁撈用具や儀礼用具をはじめとする約3,000点の民族誌資料で、現在、みんぱくに収蔵されている。

データベースは、1999年に民博が開催した企画展「南太平洋の文化遺産 ― ジョージ・ブラウン・コレクション」のときに作成されたが、日本語訳の不備などのため、長い間公開が見送られていた。今回、この地域の研究者である林勲男(本館准教授)とともにデータを再点検・修正し、新たに資料の収集地の位置情報、つまり緯度経度情報を作成した。

残念ながら、この位置情報を利用できるシステムは現在の民博にはないが、人間文化研究機構が運用する「統合検索システム」(nihuINT)では、地図に表示することができる。nihuINTは、民博をはじめ機構を構成する6機関が提供する、合計150近いデータベースを横断的に検索できるシステムである。また、検索結果をGoogleマップに表示したり、地図で範囲を限定して情報を検索することもできる。

データベースの収集地情報はローカルな地名が多く、「ニューギニアか?」といった地域を絞り込めないうえ推測を含む漠然とした表現もあったため、位置情報の作成は手作業によらざるを得なかった。データベースに収録されている資料情報は全部で2,992件だが、収集地の表記は124種類に整理できた。冊子の地図帳やGoogleマップ(特に英語版)、その他各種文献を手がかりに、ひとつひとつ位置情報を2つの緯線と2つの経線で囲まれた矩形範囲として作成していった。予想外に有用だったのが、"GeoNames"という、いわば地理情報のWikipediaのようなサービスであった。作業は去年の夏ごろから約半年かけておこなった。収集地情報にはフィジー諸島のように東経西経180°をまたぐ範囲が含まれていたため、結果的に今まで隠れていたnihuINTの地図表示機能の不具合を見つけることもできた。

nihuINTの地図表示機能は十分とはいえない。しかし、今回地道に作成した緯度経度情報は、将来、より高度な地理情報システムで利用するための基礎データになるはずである。

◆関連写真

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作成した位置情報をnihuINTで表示

◆関連ウェブサイト
ジョージ・ブラウン・コレクション・データベース
統合検索システム(nihuINT)
GeoNames