巻頭コラム
- 在日コリアンと在日フィリピン人たちが集う ~京都~ 2016年5月1日刊行
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永田貴聖
日本には、約23万人ものフィリピン人が暮らし、そのうち約12万人がすでに「永住者」の在留資格を取得し、日本社会に定着している。私は10年近く関西地域を中心として在日フィリピン人たちの社会関係について調査し、フィリピン人が自助グループを作りつつも、移住先の人びとと交流する姿を見てきた。ここでは新しい動きを紹介する。
2011年7月、「京都市地域・多文化交流ネットワークサロン」は地域に住む多様な文化的背景を持つ人びとが交流するために開設された。京都市から委託を受けた運営母体である社会福祉法人・カトリック京都司教区カリタス会地域福祉センター・希望の家では、1959年からこどもたちへの給食支援と学習補習を行ってきた。さらに、在日コリアンによる文化・芸能活動、高齢者たちの貴重な経験や記憶を歴史として記録する試みなどにも関わってきた。また、併設する希望の家保育園では、日本人だけではなく、在日コリアンや、さまざまな国籍のこどもたちがおり、留学生が臨時講師として訪問するなど「多文化共生保育」をすすめている。
現在、在日コリアンの高齢者や留学生、外国人女性など55の団体がネットワークサロンに登録している。なかでも活発なのが女性たちを中心とするフィリピン人のグループである。2012年3月、京都市を拠点に活動するフィリピン人グループがネットワークサロンの登録団体となり、現在、4つのフィリピン人グループが活動のため施設を利用している。また、これらのグループのメンバーで近隣に住むフィリピン人たちは、ネットワークサロンが主催する「世界の料理」の講師を務めたり、外国人児童の教育問題について考えるボランティア講座で通訳ボランティアを担ったりするなど運営にも協力している。
4月16日には、ここで「春まつり」が開催され、韓国料理やフィリピン料理の出店、歌や踊りが披露された。ステージでは、長年、活動している「東九条マダン」とフィリピン人女性により構成されたギターコーラスグループJapinong Sessionistaがそれぞれ演技と演奏を披露し、集まった多くの人びとを盛り上げた。「東九条マダン」は韓国・朝鮮の民衆芸能をもとにして、チャンゴ(朝鮮半島の打楽器)を用いた演奏により、在日コリアンと日本人、さらに、より幅広い人びと同士の相互理解と民衆文化創造を目指している。在日フィリピン人もその輪に加わり、新たな関係をつくる担い手になりつつある。
永田貴聖(先端人類科学研究部機関研究員)
◆関連ウェブサイト
京都市地域・多文化交流ネットワークサロン
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