巻頭コラム
- 台湾理解のキーワード:デジタル、スマート、e-世代 2016年8月1日刊行
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野林厚志
最近、日本の街を歩いて感じることは、Wi-Fiスポットが増えてきたということである。接続したサイトが英文ページであることが少なくないのは、グローバルな観光環境を反映してのことなのだろう。スマホ片手にあたりをきょろきょろしている外国人観光客の姿を目にすることも多い。もっとも最近では架空のゲームキャラ収集にご執心な人もいるようだ。これが台湾だと少し事情が異なる。
外国人観光客はもちろんのこと、台湾人は老若男女こぞってWi-Fi環境を活用して、インターネットやSNSを日常生活のなかにすっかり定着させている。筆者の居候先のパイワン族の家でも、ひっきりなしに「ラ~イン」という電子音声が響き、次の来訪の連絡を日本からするときもFacebookを使うことが少なくない。
台湾は2003年に「挑戦2008」というIT戦略をうちだし、デジタルコンテンツの制作や発信、e-世代の育成に力をいれてきた。結果として、他の国の企業を飲み込んでしまうような国際競争力をつけてきた。そんな社会的な背景のもと、みんぱくの学術協定先である順益台湾原住民博物館は、デザインや美術を学ぶ大学生や専門学校生を主な対象としたオリジナルデザインのポスターコンクールを2年に1回開催してきた。題材はもちろん台湾の原住民族の文化である。神話や装い、祭礼や歴史といったテーマが設定され、原住民族の営みに思いを馳せた作品が創られてきた。作品はコンピュータアプリケーションで創られたファイルで応募され、審査によって入選を果たした作品を博物館側は最新のプリンターで精彩に印刷し企画展で展示してきた。
8月4日からみんぱくで開催する企画展「台湾原住民民族のイメージ」ではこれまでに入選した作品の一部を紹介する。デジタル時代に台湾のe-世代が想像し表現した原住民族イメージをみんぱくの来館者の皆さんにも味わっていただきたいと思っている。博物館を通した異文化理解のユニークな取り組みが台湾で展開しているのである。
野林厚志(文化資源研究センター教授)
◆関連ウェブサイト
企画展「順益台湾原住民博物館所蔵・学生創作ポスター展 台湾原住民族をめぐるイメージ」
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