巻頭コラム
- ペーパービーズの魅力 2017年5月1日刊行
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池谷和信
2017年4月18日、みんぱくで博物館事業係の人たちとビーズづくりのワークショップを行った。100人余りの小学生を対象にして、細長い三角形からなるペーパーを丸めていって1つの玉をつくり、複数の玉を糸でつなげてビーズをつくる試みである。館内では10数人を対象にしたものは行ったことはあるが、多くの子ども(小学5年生)を対象にしたのははじめてである。
当初、私は、この企画がうまくいくのか否か、半信半疑であった。まず、時間の問題である。40分という時間内で、私が特別展ビーズの概説(10分)をしてからビーズづくりに費やす時間は十分あるのだろうか。つぎは、女の子は興味持ってくれそうだが男の子はどうか疑わしかった。現在、日本でビーズづくりを趣味にしている人々は、圧倒的に女性が多いからだ。
1つの部屋のなかで10人ぐらいに分かれて、作業が始まる。あらかじめ用意された紙切れを右手に、左手にはプラスティク棒を持ち、巻いていく。最初、これがうまくいかない男の子がいて苦戦することはあったが、少したつとできるようになっていく。最後は、ノリでとめることになるが、すべての子どもが完成させることができた。そして、何よりも男の子が「これはおもしろい」や「家に帰ってもやってみたい」という。なかには「完成品をお母さんにあげたい」という人もいて驚いた。
ペーパービーズは、10万年のビーズの歴史のなかでは革命的なものである。それ以前は、貝殻、石、ガラスなどの「堅いもの」に穴をあけてつなぐのがビーズである。しかし、ペーパービーズでは穴のあいた堅い玉をつくることから始まるのだ。しかも、今回の材料はみんぱくで廃棄されたチラシからつくった紙切れである。私は、世界のビーズ職人のほとんどが男性であることを思い出して、男女に関係なくビーズづくりはおもしろいのだということを実感することができた。
池谷和信(人類文明誌研究部教授)
◆関連写真
ワークショップの風景
できあがったペーパービーズ
◆関連ウェブサイト
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