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巻頭コラム

コレクション展示「朝枝利男の見たガラパゴス――1930年代の博物学調査と展示」の開催  2020年1月1日刊行

丹羽典生

1932年4月15日。アメリカをベースに活躍していた博物学者朝枝利男の乗船したザカ号は、ガラパゴス諸島に到着した。ダーウィンの進化論を通じて広く知られる彼の地に、探検隊の一員として足を踏み入れた最初の日本人が誕生した瞬間である。1月16日(木)より本館企画展示場で開催されるコレクション展示「朝枝利男の見たガラパゴス」は、そうした彼が残した写真、水彩画を選りすぐって紹介するものである。

 

展示する写真には、ガラパゴスといえばおなじみのイグアナ、ペンギン、そしてサボテンまでの動植物や景観が含まれている。そのほか、ドイツ本国で世界の果てで生活するヌーディストとして有名になり最後は「ガラパゴスの怪奇な事件」に巻き込まれたドイツ人の男女のパートナーの姿、さらに当時の博物学調査の様子が活写されている。

 

なによりもいまでは半ば忘れられた人物となっている朝枝利男自身が作成した、自家製のアルバム、直筆の日記、そして展示場の掉尾を飾る色鮮やかな魚類の水彩画を堪能していただきたい。朝枝は魚類の標本画を作成するほど魚の形態について細部まで知悉しており、探検隊での彼の業務の多くは魚類のスケッチと彩色に費やされていた。カラー写真が一般的でなかった時代における最先端の博物学的な技術であったのだ。いまでは誰でも鮮やかな色彩とともに魚の姿を撮影することができよう。そしてその写真が、現実の姿をある意味で正確に伝えていることは間違いない。しかし絵心がない筆者から見ても、現代の技術に依存しない朝枝利男の水彩画の方がいつまでも印象に残り続けるように思えるのだ。ぜひみなさんの目でご覧いただき、感想をお聞かせください。

 

丹羽典生(国立民族学博物館准教授)

 

◆関連写真

ガラパゴスペンギン(イサベラ島タグス入江、1932年)


 

◆関連ウェブサイト

コレクション展示「朝枝利男の見たガラパゴス――1930年代の博物学調査と展示」

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