みんぱく映画会
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2011年1月22日(土)
タレンタイム -
研究領域「包摂と自律の人間学」
国立民族学博物館では、2009年秋から開始した機関研究<包摂と自律の人間学>のテーマにあわせて、研究者による解説付きの上映会「みんぱくワールドシネマ」を始めました。第2期にあたる2010年は、さらに<国境と民族>をキーワードにして、映画上映を展開していきます。今回は、言語コーナーの新展示にあわせて、多民族多言語国家マレーシアの民族融和への道を示唆するマレーシア映画を上映します。民族、言語、宗教などの違いを超え、友愛でお互いの理解を育む若者たちを通して、<民族>の存在や、多言語社会について、皆さんと考えたいと思います。
- 日 時:2011年1月22日(土) 13:30~16:20(開場13:00)
- 場 所:国立民族学博物館 講堂
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定 員:450名
- 整理券は10:00より講堂入口にて配布いたします。
- 整理券をご提示いただくと、言語展示が新しくなった本館展示を無料でご覧いただけます。
- 事前申込は不要です。
- 参加料:無料
- 主 催:国立民族学博物館
- チラシダウンロード[PDF:1.6MB]
みんぱくワールドシネマ 映像に描かれる<包摂と自律> ―国境と民族を越えて― 第8回上映会
- 「タレンタイム」 Talentime
- 2008年/マレーシア映画/英語・中国語・マレー語・タミール語/120分/日本語字幕つき
- 【開催日】2011年1月22日(土) 13:30~16:20(開場13:00)
- 【監督】ヤスミン・アフマド
- 【出演】マヘシュ・ジュガル・キショー パメラ・チョン・ヴェン・ティーン
- 【司会】陳天璽(国立民族学博物館・先端人類科学研究部准教授)
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【解説】信田敏宏(国立民族学博物館・研究戦略センター准教授)
戸加里康子(マレー語通訳、元NHK国際放送局マレー語放送ディレクター)
「多民族国家マレーシアの民族融和への道」
本作品の舞台であるマレーシアには、多数派のマレー人の他に、華人やインド人、さらに先住民など、それぞれ宗教や言語、そして文化を異にする多くの民族が暮らしている。ただし、マレー人や先住民を優遇するブミプトラ政策下にあるマレーシアは、ブミプトラでない華人やインド人にとって必ずしも暮らしやすい国ではない。本作品では、こうした複雑な背景をもつ人びとの人間模様も描かれている。また、一つの映画作品の中に、英語、マレー語、中国語(標準語の他に、広東語、福建語など)、タミール語などが飛び交う多言語状況は、マレーシアの多民族性を示しているが、それは同時にこの国における民族間の相互理解や異文化交流の難しさを象徴している。ヤスミン監督は、これまでいくつかの作品の中で、マレーシア最大の課題である「民族融和」を描いてきたが、本作品でもそのための道筋を示唆している。(信田敏宏)
[映画解説]
マレーシア映画の新時代を担いながら、09年7月に51歳で急逝したヤスミン・アフマド監督の、最後の珠玉作。多様な背景をもつ生徒が通う高校で催されるオーディション“タレンタイム”。インド系の聾唖の青年と恋におちるマレー系の少女、笑顔の影で余命少ない母を看取るマレー系の孝行息子、厳格な父に抑圧された中国系の優等生ら参加者は、それぞれに葛藤を抱えつつ、胸に秘めた大切な想いを音楽に託し、熱いステージを繰り広げる。種々の言語が日常で響き合うマレーシアで、宗教や人種などの越え難い壁と苦闘する人々を、揺るがぬ家族愛や信仰に根差した寛容の心とユーモアで、温かく包み込むヤスミン監督の作品は、映画史の中で、かけがえのない光を放ち続けるだろう。(服部香穂里)
「包摂と自律の人間学―国境と民族を越えて―」国立民族学博物館 陳天璽
地球人口が68億人である今日、生地を離れ他国に暮らす移民は2億人に上がり、全人口の約30人に1人にあたります。国境は、人の頻繁な 越境や情報化により、その存在が薄まっているように思えます。民族間の交流や国際結婚も増え、人を民族や国籍別に区別することも難しくなっています。しかし、現代社会は国家や民族、宗教によって人を分類するきらいがあるのも事実です。それゆえ、はざまにおかれ苦悩を抱えながら生きている人は少なくありません。人の違いを認めて包摂し、移民や無国籍者など社会的マイノリティーが自分らしさを生かして自律できる社会を実現するには、どうすればよいのでしょうか。映画に描かれる一人一人の生き様を通して、国家とは、国籍とは、民族とはなにかについて考え、国境を越えた人と人のつながり、支援のありかたを模索します。
国立民族学博物館 広報企画室企画連携係
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