みんぱく映画会
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2011年8月21日(日)
サムソンとデリラ -
研究領域「包摂と自律の人間学」
新展示フォーラム「どっぷりオセアニア――夏のみんぱくフォーラム2011」関連
国立民族学博物館では、2009年秋から開始した機関研究<包摂と自律の人間学>のテーマにあわせて、研究者による解説付きの上映会「みんぱくワールドシネマ」を始めました。第3期は<家族から社会を見る>をキーワードに映画上映を展開していきます。どっぷりオセアニア――夏のみんぱくフォーラム2011に関連した"映像で見るアボリジニ:1930年代と現代2"は、先住民コミュニティで暮らしてきたアボリジニの若者たちの外の世界への逃避行と生きざまを描いた「サムソンとデリラ」を上映します。現代のオーストラリアにおけるアボリジニの状況を、皆さんと一緒に学んでいきたいと思います。
- 日 時:2011年8月21日(日) 13:30~16:30(開場13:00)
- 場 所:国立民族学博物館 講堂
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定 員:450名
- 整理券は10:00より講堂入口にて配布いたします。
- 整理券をご提示いただくと、オセアニア展示が新しくなった本館展示を無料でご覧いただけます。
- 事前申込は不要です。
- 参加料:無料
- 主 催:国立民族学博物館
- チラシダウンロード[PDF:1.47MB]
みんぱくワールドシネマ 映像に描かれる<包摂と自律> ―家族から社会を見る― 第12回上映会
どっぷりオセアニア――夏のみんぱくフォーラム2011 関連 映像で見るアボリジニ:1930年代と現代2
- 「サムソンとデリラ」 / Samson and Delilah
- 2009年/オーストラリア映画/英語・ワルピリ語他オーストラリア先住民言語/101分/日本語・英語字幕つき
- 【開催日】2011年8月21日(日) 13:30~16:30(開場13:00)
- 【監督】ワーウィック・ソートン
- 【出演】ローワン・マクマナラ/マリッサ・ギブソン
- 【司会】鈴木紀(国立民族学博物館・先端人類科学研究部准教授)
- 【解説】飯島秀樹(九州大学・人間環境学研究院准教授)
「映画解説」
砂漠地帯の小さなアボリジニ集落で、祖母を看病しながら異国を夢見る少女と、何者にもなれない苛立ちをガソリンの吸引で紛らす少年との、不器用だが純粋な愛を描き、カンヌ国際映画祭で新人監督賞に輝いたほか、オーストラリア国内でも絶賛された。バンドの刻む軽快なリズムや、カーステレオから流れる音楽が、削ぎ落とされた台詞を補い、演技経験のない俳優たちから、ナチュラルな魅力を絶妙に引き出す。居場所を求めて集落の外に飛び出したふたりを次々と襲う過酷な試練同様に、アボリジニの前途は多難であるが、お互いがお互いの希望であることを確かめ合うような恋人同士の笑顔に、自身もアボリジニである監督の、切なる願いが込められている。(服部香穂里)
オーストラリア中央砂漠アボリジニの現在
『サムソンとデリラ』は元来「旧約聖書」に書かれている短い物語である。イスラエル人が自らの神を忘れ、ペリシテ人の支配下にあった時代。サムソンは神の徴を担う怪力を備えていたが、見染めたデリラに力の源泉たる髪の毛を切られてしまう。この物語の舞台を現代オーストラリアに生きる先住民世界にうつしたのが今回の映画である。中央砂漠のオーストラリア先住民は、19世紀半ばから西欧移民の支配下で排除され続けたが、1967年に国民と承認され、北部準州で土地権が承認されると、人々は自治を求めてかつての故郷に戻っていった。これはオーストラリアの先住民政政策が排除から包摂へと転換した歴史として描かれるが、ではその後、先住民コミュニティで生まれてきた青年達は現在どのような世界に暮らしているのか。現代オーストラリアのサムソンとデリラは、ある事情からコミュニティを逃れ都市に出てくるが、そこで彼らが直面する現実とは何か。この映画は、多くの日本人観光客が中央砂漠の観光地で見る先住民の背後にある一面の真実を描いている。 包摂の中の排除を生きる彼らを目前にして、私たちはどのように、彼らとの共生を再想像することができるであろうか。(飯嶋秀治)
「包摂と自律の人間学―家族から社会を見る―」国立民族学博物館 鈴木紀
「包摂と自律」とは、社会の中で一人ひとりの存在が認知され、かつ尊重されることを意味します。だれもが自分らしく生きるためには、仲間はずれにされることなく、さりとて誰かのいいなりになるのでもない、適切なバランスが求められます。こうした状態を具体的に思い描くために、家族の姿に着目してみましょう。家族は社会から区切られた私的な空間ですが、社会の影響は家族の中にもいやおうなしに浸透し、家族の運命を揺さぶります。ある者の願いが、社会の変化や国家の制度と相いれないない時、その家族はどのようにふるまえばよいのでしょうか。映画に描かれた世界各地の家族の葛藤と、それを乗り越えるための工夫、そして他者からもたらされる支援の受け止め方を振り返ることにより、「包摂と自律」を身近な問題として考えていきましょう。
国立民族学博物館 広報企画室企画連携係
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