国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく映画会

2012年5月12日(土)
僕たちは世界を変えることができない。 But, we wanna build a school in Cambodia.
研究領域「包摂と自律の人間学」

チラシダウンロード[PDF:3.24MB]

国立民族学博物館では、2009年秋から開始した機関研究<包摂と自律の人間学>のテーマにあわせて、研究者による解説付きの上映会「みんぱくワールドシネマ」を実施しています。第4期は<支援と絆>をキーワードに映画上映を展開していきます。今回は日本映画「僕たちは世界を変えることができない。But, we wanna build a school in Cambodia.」を上映します。日本の若者たちがカンボジアでの学校建設支援に向けて取り組む姿を通して、支援とは何かを皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

  • 日 時:2012年5月12日(土) 13:30~16:30(開場13:00)
  • 場 所:国立民族学博物館 講堂
  • 定 員:450名
    • 整理券は10:00より講堂入口にて配布いたします。
    • 事前申込は不要です。
  • 参加料:無料
  • 主 催:国立民族学博物館

● みんぱくワールドシネマ 映像に描かれる<包摂と自律> ―支援と絆― 第15回上映会

「僕たちは世界を変えることができない。 But, we wanna build a school in Cambodia.」
2011年/日本映画/日本語・クメール語/126分
【開催日】2012年5月12日(土) 13:30~16:30(開場13:00)
【監督】深作健太
【出演】向井理、松坂桃季、柄本佑、窪田正孝
【司会】鈴木紀(国立民族学博物館・先端人類科学研究部准教授)
【解説】佐藤寛(アジア経済研究所国際交流・研修室長)
    秋保さやか(筑波大学人文社会科学研究科・大学院生)
「映画解説」

ひょんなことから、カンボジアに学校を建設するためのボランティアに携わることになった、医大生・葉田甲太のノンフィクションの映画化。漠然とした日常に新たな生きがいを求めて、資金集めのチャリティーイベントを開催したり、現地視察の旅で過酷な実状に打ちのめされたりする中で、徐々に芽生える責任感や使命感を拠り所に奮闘する今時の大学生を、向井理ら現在の日本映画界を担う若手俳優陣が、伸びやかに好演している。現在もなお、HIVに苦しむカンボジアの人々への偏見をなくしたいとの思いで手掛けたドキュメンタリーを各地で上映するなど、ゴールなき支援活動に取り組み続ける葉田氏。そんな彼の実感こもるタイトルから、それでも、行動することが世界を変える小さな一歩につながるというポジティブなメッセージが浮かび上がる、爽快な佳篇だ。(服部香穂里)

開発の舞台としてのカンボジア

カンボジアは、1970年代から約20年に渡る内戦を経験した。そして、1991年パリ和平協定が締結され、国連の支援による1993年選挙実施以降、大量の開発援助が国内に流入するようになった。その後、政治的安定化が進み、国家政策も「復興」から「開発」へと変わっていった。内戦終結から20年が経とうとしている現在もなお、カンボジアを支援のために訪れる個人、団体が後を絶たない。この『僕たちは世界を変えることが出来ない』でも描かれているような教育支援も多く行われ、農村を歩けば、あちこちで日本・諸外国の支援で建てられた学校を目にする。以前、日本の支援で建てられ、支援者の名が壁に刻まれた学校を指さし、村人が「韓国人の支援によって建てられた」と説明してくれた。異国の地に、学校を建て、そこに名を刻む日本人と支援者の国籍はあまり気にとめず、それを利用するカンボジアの人々。本作品の日本人の若者とカンボジア人の関係も同様、支援者−被支援者という単純な図式では捉えきれず、「誰のための支援なのか?」という問いを孕んでいるように思える。(秋保さやか)

「包摂と自律の人間学―支援と絆―」国立民族学博物館 鈴木紀

包摂とは、自分では解決できない困難を抱えている人に対して、他の人や社会全体が支援の手をさしのべることを意味します。自律とは、支援を受けた人が少しずつ自信をつけ、やがて自分でその問題に向きあえるようになることを意味します。このように包摂と自律を実現するためには、支援という行為が鍵になります。それでは、よい支援とはどのようなものでしょうか。それは支援する人と支援を受ける人との間に信頼感が育まれ、相互に強い絆を意識するような場合ではないでしょうか。もとより、おざなりな支援からは絆は生まれませんが、過剰な支援も絆を支配従属関係に変えてしまう危険性があります。そのためよりよい支援のためには、なぜ、どのくらい、いつまで、誰に支援するか/誰から支援を受けるかが問われることになります。支援と絆をめぐるこうした問題を、映画を通して考えましょう。

■お問い合せ先
国立民族学博物館 広報企画室企画連携係
〒565-8511 大阪府吹田市千里万博公園10-1
Tel: 06-6878-8210(土日祝を除く9:00~17:00)