みんぱく映画会
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2012年11月10日(土)
未来を生きる君たちへ -
研究領域「包摂と自律の人間学」
チラシダウンロード[PDF:3.76MB]国立民族学博物館では、2009年秋から開始した機関研究<包摂と自律の人間学>のテーマにあわせて、研究者による解説付きの上映会「みんぱくワールドシネマ」を実施しています。第4期は<支援と絆>をキーワードに映画上映を展開していきます。今回は、デンマーク映画「未来を生きる君たちへ」を上映します。アフリカの難民キャンプで支援活動を行っている医師の、故郷の家族との問題と自身の心の葛藤を通して、この現代社会に生きることを問いかけた作品について、皆さんと共に考えていきたいと思います。
- 日 時:2012年11月10日(土) 13:30~16:30(開場13:00)
- 場 所:国立民族学博物館 講堂
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定 員:450名
- 入場整理券を10:00から講堂入口にて配布いたします。
- 事前申込は不要です。
- 参加料:無料
- 主 催:国立民族学博物館
● みんぱくワールドシネマ 映像に描かれる<包摂と自律> ―支援と絆― 第18回上映会
- 未来を生きる君たちへ Hævnen / In a Better World
- 2010年/デンマーク=スウェーデン合作/デンマーク語・スウェーデン語・英語/118分/日本語字幕付き
- 【開催日】2012年11月10日(土) 13:30~16:30(開場13:00)
- 【監督】スサンネ・ビア
- 【出演】ミカエル・バーシュブラント トリーヌ・ディルホム
- 【司会】鈴木紀(国立民族学博物館准教授)
- 【解説】佐保吉一(東海大学文学部北欧学科教授)
「映画解説」
デンマーク語の原題"復讐"が示唆するように、9.11以降の血なまぐさい世の風潮に粛然と警鐘を鳴らす、アカデミー賞最優秀外国語映画賞受賞作。デンマークに家族を残し、理不尽な暴力に支配されたアフリカの紛争地の難民キャンプで、支援活動に従事するスウェーデン人医師は、職務と倫理観との間で日々苦悩しながら、いじめに遭う息子を守る父親の責任すら充分に果たせずにいた。その只中に、母親の死を機にロンドンから越してきた転校生が現れ、一見平穏な社会に巣食う暴力性や、すれ違い続きの親子や夫婦の対峙すべき問題が、露になってゆく。極限下に置かれた男女の心の機微を残酷なほどリアルに描いてきた女性実力派監督・スサンネ・ビアが、善悪、愛憎など、二元論では単純に割り切れぬ要素を巧みに交錯させつつ、子どもが抱える闇へも分け入り、より重層的な力篇を完成させた。(服部香穂里)
映画「未来を生きる君たちへ」を歴史の視点からみる
デンマークの歴史からみると、この映画には「途上国支援」「非暴力」というキーワードが埋め込まれているようだ。
監督のスサンネ・ビアは作品によく途上国支援の実践者を登場させる。例えば「アフター・ウェディング(2006)」もそうである。この背景にはデンマークが途上国支援に熱心なことがあげられる。デンマークの国民総所得に占める政府開発援助の額は、国連が求める0.7パーセントを常に越えており、1993年には、国民一人当たりの額で世界一の援助国となっている。このように国を挙げて途上国支援に熱心な同国では、専門の担当大臣が任命されているほどである。
デンマークでは近代以降、「非暴力」の伝統がみられ、例えば宗教改革、絶対王政導入、絶対王政の終焉という西洋史における大変革が、暴力による流血を伴わず、平和裏に実現している。1864年のプロシアとの戦争でデンマークは大敗北を喫した。その復興過程では新たな戦争という暴力に訴える失地回復(復讐)ではなく、農地拡大という内的発展による復興を選択した。さらに、教師や両親による体罰が禁止されている現在、映画の中でも父親は息子に対して決して手を上げなかったのが印象的である。(佐保吉一)
「包摂と自律の人間学―支援と絆―」国立民族学博物館 鈴木紀
包摂とは、自分では解決できない困難を抱えている人に対して、他の人や社会全体が支援の手をさしのべることを意味します。自律とは、支援を受けた人が少しずつ自信をつけ、やがて自分でその問題に向きあえるようになることを意味します。このように包摂と自律を実現するためには、支援という行為が鍵になります。それでは、よい支援とはどのようなものでしょうか。それは支援する人と支援を受ける人との間に信頼感が育まれ、相互に強い絆を意識するような場合ではないでしょうか。もとより、おざなりな支援からは絆は生まれませんが、過剰な支援も絆を支配従属関係に変えてしまう危険性があります。そのためよりよい支援のためには、なぜ、どのくらい、いつまで、誰に支援するか/誰から支援を受けるかが問われることになります。支援と絆をめぐるこうした問題を、映画を通して考えましょう。
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