国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく映画会

2013年9月15日(日)
再会の食卓

チラシダウンロード[PDF:1.08MB]

国立民族学博物館では、2009年秋から開始した機関研究<包摂と自律の人間学>のテーマにあわせて、研究者による解説付きの上映会「みんぱくワールドシネマ」を実施しています。第5期は<家族のゆくえ>をキーワードに映画上映を展開していきます。今回は、中国映画「再会の食卓」を上映します。 歴史的・政治的状況の中で離散していた家族の、長年を経た再会のドラマを通して、現代社会の中で離れて生活をしていかざるをえない家族のゆくえを、皆さんとともに考えていきたいと思います。

  • 日 時:2013年9月15日(日)13:30~16:00(開場13:00)
  • 場 所:国立民族学博物館 講堂
  • 定 員:450名
    • 入場整理券を10:00から講堂入口にて配布いたします。
    • 事前申込は不要です。
  • 参加料:無料(ただし、本館展示をご覧になる方は観覧料が必要です。)
  • 主 催:国立民族学博物館

● みんぱくワールドシネマ 映像に描かれる<包摂と自律> ―家族のゆくえ― 第22回上映会

再会の食卓
団圓 APART TOGETHER
2010年/中国映画/中国語/96分/日本語字幕付き
【開催日】2013年9月15日(日)13:30~16:00(開場13:00)
【監督】王全安(ワン・チュエンアン)
【出演】凌峰(リン・フォン)、廬燕(リサ・ルー)
【司会】小長谷有紀(国立民族学博物館教授)
【解説】野林厚志(国立民族学博物館教授)
「映画解説」

1949年以降、長きにわたる中国と台湾との政治的な断絶により、波乱の道のりを歩むことになったある家族に光を当て、ベルリン国際映画祭で銀熊賞に輝いた佳篇。台湾へと逃れた国民党軍兵士の夫と生き別れ、身重のまま中国に取り残された妻は、心優しき新たな伴侶と子宝にも恵まれ、つましくも平穏な日々を過ごしていた。中台関係の緊張がようやく緩和される中、安否も分からぬままだった元夫との数十年ぶりの再会が、にわかに胸をざわめき立たせる。心づくしの料理で懸命にもてなす夫をはじめ、初対面の実父を前に無関心を決め込む長男や、ふたりの娘たちの複雑な心情が、静かに様子を見守る孫娘を介して、次第に露になっていく。実話に想を得た中国の気鋭・ワン・チュエンアン監督は、急激に発展を続ける上海を舞台に、悲痛な近現代史が奪い去っていったものと、それでも残る純粋な愛が、時に団欒の、時に修羅場と化す食卓でスリリングに絡み合う、余韻深い人間ドラマを完成させた。(映画評論家 服部香穂里)

国家との絆、夫婦の絆

1949年、中国大陸では国民党と中国共産党との戦いに区切りがつけられ、大陸中国は共産党、台湾は国民党が政権をになうことになった。国民党軍の軍人たちは、蒋介石が率いる国民党とその支持者とともに台湾にわたった。軍人の多くは家族を故郷に残したままであった。望郷の思いはあったものの、退役後も榮民とよばれ、国民党の庇護のもとで生活は保障された。やがて、少なからぬ人たちが台湾で結婚し家族を作った。一方で、残された家族は中国共産党の大陸中国では敵軍兵士の家族である。彼らは肩身の狭い思いをしながら大陸で生きていくことになった。
1980年代以降、民主化が進んだ台湾では、国民党政権下で特権的階級であった榮民に対する風当たりは徐々に強くなっていった。同時に、高齢化していく榮民の生活や介護が台湾社会の中で新たな課題として浮かび上がっていった。
戦争によって家族の絆を引き裂かれるのは一般市民だけではない。戦地におもむいた軍人とその家族もまた国家の都合に翻弄されていくのである。(野林厚志)

「包摂と自律の人間学―世界の映画から知る、家族のゆくえ―」国立民族学博物館 小長谷有紀

教科書やさまざまなパンフレットにえがかれている家族といえば、たいてい両親と男女2人の子どもたち。けれど、実際に統計をみるかぎり、そんな家族はもう平均的なすがたであるとはいえません。シングルの選択、国際的な結婚や養子縁組、日本ではまだ法的に認められていない同性婚、老後のシングルライフ、海外移住など。家族のすがたは変わりつつあります。血縁だけが家族の条件ではなくなる一方で、医療技術の進歩にともなって遺伝子的な近さが新たな意味をもつ時代です。映画にえがかれた家族のすがたから、現代世界を知りながら、今後のゆくえをさぐってみましょう。わたしたちは、いつでも誰かを助けることができると同時に、つねに多くの人びとに助けてもらっている生き物です。だから、自分とは意見のちがう他者を包み込みながら自分らしさをたもっていくことは、豊かに生きるための、1人ひとりの課題です。

■お問い合せ先
国立民族学博物館 広報企画室企画連携係
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Tel: 06-6878-8210(土日祝を除く9:00~17:00)