みんぱく映画会
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2014年1月25日(土)
ラビット・ホール -
チラシダウンロード[PDF:1.32MB]国立民族学博物館では、2009年秋から開始した機関研究<包摂と自律の人間学>のテーマにあわせて、研究者による解説付きの上映会「みんぱくワールドシネマ」を実施しています。第5期は<家族のゆくえ>をキーワードに映画上映を展開していきます。今回はニコール・キッドマン製作・主演のアメリカ映画「ラビット・ホール」です。4歳の一人息子を交通事故で亡くした母親の深い喪失感から再生への過程を静かに見つめた物語を通して、大切な愛する人を突然失った時の家族の在り方について皆さんとともに考えていきたいと思います。
- 日 時:2014年1月25日(土)13:30〜16:00(開場13:00)
- 場 所:国立民族学博物館 講堂
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定 員:450名
- 入場整理券を10:00から講堂入口にて配布いたします。
- 事前申込は不要です。
- 参加料:無料(ただし、本館展示をご覧になる方は観覧料が必要です。)
- 主 催:国立民族学博物館
● みんぱくワールドシネマ 映像に描かれる<包摂と自律> ―家族のゆくえ― 第24回上映会
- ラビット・ホール Rabbit Hole
- 2010年/アメリカ映画/英語/91分/日本語字幕付き
- 【開催日】2014年1月25日(土)13:30〜16:00(開場13:00)
- 【監督】ジョン・キャメロン・ミッチェル
- 【出演】ニコール・キッドマン アーロン・エッカート
- 【司会】鈴木紀(国立民族学博物館准教授)
- 【解説】岩佐光広(高知大学人文学部講師)
「映画解説」
ピューリッツァー賞に輝く同名戯曲に感銘を受けたニコール・キッドマンが、自ら製作も兼ねて映画化を実現させ、賞レースを沸かせた注目の一本。花と緑に囲まれた住宅街で、愛犬と幸福に暮らすある家族だったが、4歳の一人息子の交通事故死が、生活を一変させてしまう。在りし日の息子の映像に涙しつつ、無理やり前に進もうとする夫と、事故から8か月を経ても、時に周囲を困惑させるほどに情緒不安定な妻は、いとおしい存在を亡くした喪失感とそれぞれに闘いながらも、深まる互いの溝を埋められずにいる。息子をはねた車を運転していた少年と再会した妻は、しまい込んできた胸中を語り合い、彼の漫画に登場する"パラレル・ワールド"を夢見るうちに、心に安らぎを覚える。大切な想い出とともに、決して消えない悲しみや痛みをも、ぎゅっと握られた手と手で受け止めていく夫婦の、これからに思いを馳せたくなる趣深い珠玉作だ。(映画評論家 服部香穂里)
グリーフ・ワークの紡ぐもの
愛する人との死別、とりわけ予期せぬ突然の死別は、悲嘆(グリーフ)を引き起こす代表的な経験である。「グリーフ・ワーク(悲嘆作業)」とは、その悲嘆と向きあい、受け入れ、死別した者との関係を紡ぎなおしていく過程のことである。このグリーフ・ワークは、死別の経験の当事者である遺族だけの問題であるように考えられがちである。しかし劇中で描かれるように、愛する者の死の影響は遺族に限られるものではない。その影響は、母親や妹、親しい友人、セルフヘルプ・グループで出会った人たちなど、遺族を取り巻く人たちのあいだにも波紋のように広がり、それまでの関係を激しく揺さぶる。そのなかで、解消しきれない悲しみや怒り、わだかまりを抱え、明確な「答え」や「希望」が見出せずにいながらも、関係を紡ぎなおそうと歩みだす主人公夫婦。彼らの姿は、グリーフ・ワークが死別した者との関係を紡ぎなおす過程であると同時に、残された者たちが関係を紡ぎなおす過程でもあるということに気づかせてくれる。(岩佐光広)
「包摂と自律の人間学―世界の映画から知る、家族のゆくえ―」国立民族学博物館 小長谷有紀
教科書やさまざまなパンフレットにえがかれている家族といえば、たいてい両親と男女2人の子どもたち。けれど、実際に統計をみるかぎり、そんな家族はもう平均的なすがたであるとはいえません。シングルの選択、国際的な結婚や養子縁組、日本ではまだ法的に認められていない同性婚、老後のシングルライフ、海外移住など。家族のすがたは変わりつつあります。血縁だけが家族の条件ではなくなる一方で、医療技術の進歩にともなって遺伝子的な近さが新たな意味をもつ時代です。映画にえがかれた家族のすがたから、現代世界を知りながら、今後のゆくえをさぐってみましょう。わたしたちは、いつでも誰かを助けることができると同時に、つねに多くの人びとに助けてもらっている生き物です。だから、自分とは意見のちがう他者を包み込みながら自分らしさをたもっていくことは、豊かに生きるための、1人ひとりの課題です。
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