みんぱく映画会
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2014年11月9日(日)
海と大陸 -
研究領域「包摂と自律の人間学」
チラシダウンロード[PDF:660KB]国立民族学博物館では、2009年秋から開始した機関研究<包摂と自律の人間学>のテーマにあわせて、研究者による解説付きの上映会「みんぱくワールドシネマ」を実施しています。第6期は<多文化を生きる>をキーワードに映画上映を展開していきます。今回は、イタリア南部の小さな島の、環境が変わりゆく貧しい漁村で、法律に反すると知りながら密入国者の親子を助けた一家の苦闘を通して、現代における移民・難民の問題を考えていきたいと思います。
- 日 時:2014年11月9日(日)13:30~16:00(開場13:00)
- 場 所:国立民族学博物館 講堂
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定 員:450名
- 入場整理券を10:00から講堂入口にて配布いたします。
- 事前申込は不要です。
- 要展示観覧券(一般 420円)
- 主 催:国立民族学博物館
● みんぱくワールドシネマ 映像に描かれる<包摂と自律>―多文化を生きる― 第28回上映会
- 海と大陸 TERRAFERMA
- 2011年/イタリア=フランス合作/イタリア語・シチリア語・アムハラ語/93分/日本語字幕付き
- 【開催日】2014年11月9日(日)13:30~16:00(開場13:00)
- 【監督】エマヌエーレ・クリアレーゼ
- 【出演】フィリッポ・プチッロ ドナテッラ・フィノッキアーロ
- 【司会】鈴木紀(国立民族学博物館准教授)
- 【解説】宇田川妙子(国立民族学博物館准教授)
「映画解説」
衰退する漁業から観光業に活路を見出す、南イタリアに浮かぶ小島を舞台に、漂着した密入国者の親子を匿うことになった、ある家族の葛藤を活写する陰影に富む人間ドラマ。ヴェネツィア国際映画祭で審査員特別賞を受賞したほか、イタリア国内外で数々の賞に輝いた。父親を亡くした二十歳の青年は、島の将来に悲観的で新天地での生活を望む母親と、昔気質の誇り高き漁師の祖父との間で、心揺れていた。そんなある日、夏の観光シーズンを迎えた島がリゾート客でにぎわう中、祖父と漁に出ていた海で、アフリカから流れ着いた妊婦とその息子に遭遇してしまう。母子を家に連れ帰ったものの、彼らに手を差し伸べることも許されぬ法律や、その存在すら認めようとしない観光ムードに疑問を抱いた彼は、自身の進むべき道を模索していく。ままならぬ現実と向き合いつつ、あどけなさを残す好青年が成長する姿から、人間本来の良心や寛容の力が頼もしく溢れ出す、瑞々しい名篇である。(映画評論家 服部香穂里)
イタリア人にとっての「不動の地」
地中海に突き出た半島、イタリア。その地理的特徴もあって、移民・移動はイタリアに様々な影響をもたらしてきた。現在、イタリア在住の外国人は約440万人、全人口の7.4%にあたる。その出身地は、アフリカ、東南アジア、ロシア、東欧、さらに中国からの移民も増え、地中海を渡ってくる不法移民の船が漂着する事件も頻発している。また、かつて多くの移民はイタリアを通過してドイツ等に向かったが、今ではイタリアに留まり、イタリア生まれの第2世代も多くなった。しかし、差別や確執も深刻化し、2002年には移民受入れ制限を強化する法律(通称ボッシ・フィーニ法)が作られ、人びとの移民に対する対応や感情は揺れ動いている。そしてもう一つ注目すべきは、イタリア人自身が19世紀後半以降、国内での南から北への移民、さらにはドイツ、アメリカ、オーストラリア等への移民を経験してきたことである。現在でもその動きは止まっていない。つまり移民は、イタリア人自身の問題でもあり、その意味でも、排除か包摂か、受け入れ側か移民側か、という単純な二分法では割り切れないのだ。本映画の原題 Terra Ferma の直訳は「不動の地」である。歴史的に、自分たちだけでなく「よそ者」を含む様々な人びとの往来と生活の場であり続けてきたイタリア。彼らにとって「不動の地」とはどこなのか、そこは「楽園」なのか・・・グローバル化が進む世界の一員として、日本の私たちも考えていく必要がある。(宇田川妙子)
「包摂と自律の人間学―多文化を生きる人々の映画を見る―」国立民族学博物館 鈴木紀
国内外を問わず自分の故郷を離れて異郷に暮らす時、私たちは必ずマイノリティ(少数者)になります。そこが安住の地となるか否かは、周囲の人々が私たちをどのように包摂するか、そして私たち自身がどれだけ自律しているかにかかっています。隣人から暖かく迎えられ、自分に自信が持てると、居心地がよいものです。ところがその安堵感は、些細なうわさや事件、予期せぬ災害や不景気などをきっかけに、暗転することもあります。社会のストレスはしばしば、少数者に向けられるからです。このような緊張感は、<移民>や<外国人労働者>など、多文化環境に生きる人々を描く映画からうかがい知ることができます。まずは少数者の目線にたって、その境遇を実感してみましょう。次に多数者の目線から、少数者の葛藤を眺めてください。そうすれば映画を見終わってみんぱくを出た途端、慣れ親しんだ私たちの日常生活が少し違って見えてくるかもしれません。
関連イベント
展示場ミニレクチャー
本館のヨーロッパ展示場の「変動するヨーロッパ」セクションにて、宇田川妙子(本館准教授)が、本作品鑑賞の参考となるヨーロッパと移民についての解説をおこないます。
- 日時:2014年11月9日(日)上映当日 11:30~12:00(予定)
- 場所:国立民族学博物館 本館展示場(ヨーロッパ展示場)
- 参加無料 ※要展示観覧券/申込不要
- 詳しくはこちら
国立民族学博物館 広報企画室企画連携係
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