みんぱく映画会
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2015年2月28日(土)
もうひとりの息子 -
研究領域「包摂と自律の人間学」
チラシダウンロード[PDF:2.92MB]国立民族学博物館では、2009年秋から開始した機関研究<包摂と自律の人間学>のテーマにあわせて、研究者による解説付きの上映会「みんぱくワールドシネマ」を実施しています。第6期は<多文化を生きる>をキーワードに映画上映を展開していきます。今回は、湾岸戦争の混乱の中で、赤ん坊を取り違えられたことが判った、フランス系イスラエル人一家とパレスチナ人一家の動揺と葛藤のドラマを描く「もうひとりの息子」を上映します。敵対し憎悪する民族がいかに歩み寄り、理解していくことができるのかを見つめていきたいと思います。
- 日 時:2015年2月28日(土)13:30〜16:30(開場13:00)
- 場 所:国立民族学博物館 講堂
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定 員:450名
- 入場整理券を10:00から講堂入口にて配布いたします。
- 事前申込は不要です。
- 要展示観覧券(一般 420円)
- 主 催:国立民族学博物館
● みんぱくワールドシネマ 映像に描かれる<包摂と自律>―多文化を生きる― 第29回上映会
- もうひとりの息子 Le fils de l'Autre
- 2012年/フランス映画/フランス語・ヘブライ語・アラビア語・英語/105分/日本語字幕付き
- 【開催日】2015年2月28日(土)13:30〜16:30(開場13:00)
- 【監督】ロレーヌ・レヴィ
- 【出演】エマニュエル・ドゥヴォス パスカル・エルベ
- 【司会】鈴木紀(国立民族学博物館准教授)
- 【解説】菅瀬晶子(国立民族学博物館助教)
「映画解説」
根深く対立するイスラエルとパレスチナ間の子どもの取り違えという、センセーショナルな題材に、ひととして生きる上で大切なものを細やかに織り込み、東京国際映画祭でグランプリと監督賞のダブル受賞を果たした注目作。フランス系イスラエル人の両親のもとで育った歌手を夢見る18歳の青年が、兵役に就くために受けた血液検査の結果から、生後間もなくパレスチナ人夫婦の赤ん坊と取り違えられていたという、湾岸戦争初期の病院内で起きた過失が発覚する。これまで築いてきた家族の歩みやアイデンティティを根底から崩す衝撃の事実に、両家に激しい動揺が広がるが、それぞれの家庭を訪ね、ぎこちなくも心を開くうちに、過酷な運命を受け入れていく。フランス生まれのユダヤ人女性監督・ロレーヌ・レヴィは、政治的な立場からは距離をおき、血のつながりを越え、他者への思いやりや理解に溢れる子どもを育て上げたふたりの母親に、惜しみない敬意と共感を込める。彼女たちの愛の結晶であり、お互いをかけがえのない存在と認め合うふたりの息子に、不穏な時代の一筋の光明を見出そうとする、ポジティブな力みなぎる佳篇が生まれた。(映画評論家 服部香穂里)
憎みあうことが日常の異常な世界で
「ユダヤ人国家」であり、「多文化共生の国」。イスラエルの観光案内所にゆくと、そのようなうたい文句が踊っている。この国が全世界からユダヤ人を受け入れ、同時に彼らの文化的背景も受け入れたことは、確かに事実である。 街を歩けばヨーロッパ系や中東系など、さまざまなユダヤ人市民に遭遇する。しかし彼らが均一な生活水準を保っているとは言い難く、事実中東・アフリカ系に対する差別が存在し、さらにその下にはアウトカーストとして差別されるアラブ人(パレスチナ人)がいる。 なかでもヨルダン川西岸地区など占領地区に住むアラブ人は、イスラエルのユダヤ人市民にとってはまったくの他者であり、生活を脅かす敵ですらある。両者の間には埋めがたい溝があり、対話したことすらないというのに、憎みあうことが日常となってしまっている。しかしながら、イスラエル建国以前のパレスチナでは、ユダヤ教徒(ユダヤ人)とムスリム(アラブ人)は共存し、隣人として支え合ってきたのである。源を同じくする一神教の信徒として、それは当然のことであったのだが、すべての者が神の前に平等であることを、今は当事者たちすら忘れてしまっている。(菅瀬晶子)
「包摂と自律の人間学―多文化を生きる人々の映画を見る―」国立民族学博物館 鈴木紀
国内外を問わず自分の故郷を離れて異郷に暮らす時、私たちは必ずマイノリティ(少数者)になります。そこが安住の地となるか否かは、周囲の人々が私たちをどのように包摂するか、そして私たち自身がどれだけ自律しているかにかかっています。隣人から暖かく迎えられ、自分に自信が持てると、居心地がよいものです。ところがその安堵感は、些細なうわさや事件、予期せぬ災害や不景気などをきっかけに、暗転することもあります。社会のストレスはしばしば、少数者に向けられるからです。このような緊張感は、<移民>や<外国人労働者>など、多文化環境に生きる人々を描く映画からうかがい知ることができます。まずは少数者の目線にたって、その境遇を実感してみましょう。次に多数者の目線から、少数者の葛藤を眺めてください。そうすれば映画を見終わってみんぱくを出た途端、慣れ親しんだ私たちの日常生活が少し違って見えてくるかもしれません。
関連イベント
展示場ミニレクチャー
本館ナビひろばにて、菅瀬晶子(本館助教)が、本作品鑑賞の参考となる、映画の中で描かれてきたパレスチナについての解説をおこないます。
- 日時:2015年2月28日(土)上映当日 11:30〜12:00(予定)
- 場所:国立民族学博物館 本館ナビひろば
- 参加無料 ※要展示観覧券/申込不要
- 詳しくはこちら
国立民族学博物館 広報企画室企画連携係
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