みんぱく映画会
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2015年10月12日(月・祝)
長江哀歌 -
研究領域「包摂と自律の人間学」
チラシダウンロード[PDF:3.51MB]国立民族学博物館では<包摂と自律>のテーマにあわせて、研究者による解説付きの上映会「みんぱくワールドシネマ」を実施しています。第7期は<マイノリティ・ボイス=少数派の声>をキーワードに映画上映を展開していきます。今回は中国映画「長江哀歌」です。三峡ダム建設で沈みゆく古都を舞台に、国家の発展や変化によって、土地や家、伝統文化が失われていく現代に生きる市井の人びとの姿を通して、社会の在り方を皆さんとともに考えていきたいと思います。
- 日 時:2015年10月12日(月・祝)13:30〜16:30(開場13:00)
- 場 所:国立民族学博物館 講堂
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定 員:450名
※入場整理券を11:00から観覧券売場(本館2F)にて配布します。事前申込は不要です。 - 要展示観覧券(一般 420円)
- 主 催:国立民族学博物館
● みんぱくワールドシネマ 映像に描かれる<包摂と自律>─マイノリティ・ボイス=少数派の声─
第30回上映会- 長江哀歌(ちょうこうエレジー) 三峡好人 Still Life
- 2006年/中国映画/中国語/113分/日本語字幕付き
- 【開催日】2015年10月12日(月・祝)13:30〜16:30(開場13:00)
- 【監督・脚本】賈樟柯(ジャ・ジャンクー)
- 【出演】趙濤(チャオ・タオ)、韓三明(ハン・サンミン)
- 【司会】鈴木紀(国立民族学博物館准教授)
- 【解説】河合洋尚(国立民族学博物館助教)
「映画解説」
中国の国家的事業であった長江の三峡ダム建設に伴い、二千年かけて築き上げた歴史や文化が瞬く間に水に沈みゆく古都・奉節を舞台に、激動する社会の片隅でひたむきに暮らす人びとの生命の輝きを力強く捉え、ヴェネツィア国際映画祭グランプリなど国際的に高く評価された人間ドラマ。着々と進むダム計画により、住民の多くが立ち退きを余儀なくされる奉節(ほうせつ)に、16年前に妻子と別れた炭鉱夫と、三峡の工場に働きに出たまま行方知れずの夫を2年も待つ看護師が、時期を同じく山西省から訪ねてくる。それぞれに懸命に生きる人たちとふれ合いつつ、伴侶を探して街を彷徨う彼らの背後で、労働者ひとりひとりの手で目まぐるしく姿を変える情景が、鮮烈に映し出される。小型デジタルカメラで撮影されたリアルな映像の中に、不意に紛れ込むファンタジー的趣向が、あまりにシュールで圧倒されてしまう現実に、ほのかな温もりをもたらす。若者たちの葛藤を通して、中国の"現在"を透徹したまなざしで見つめ続け、1作ごとに進化を遂げてきた70年生まれの気鋭監督ジャ・ジャンクーが、さらに視野を広げて新たな境地へと踏み出した珠玉作だ。(映画評論家 服部香穂里)
三峡ダム建設について
三峡ダムは、1993年に長江の中流域で着工され、2009年に完成した。政府が三峡ダムを建設する目的は、長江の洪水を防ぎ、電力を生み出すだけでなく、長江の水位をかさ上げすることで西部の中心都市である重慶市と水路で結ぶことにあった。中国では、東部沿海地方が豊かで西部内陸地方が貧しいという、経済格差が問題になっている。それゆえ、東西の物流を促進し、西部の経済発展を促進することも、三峡ダム建設の目的の一つであった。三峡ダムの建設は、多くの労働者を長江中流域の諸都市に向かわせ、巨大な労働市場をつくりだした。しかし他方で、そこの地元住民は甚大な影響を被った。特に、重慶市と湖北省の一部地域では、ダム建設により都市が水没するため、移住を余儀なくされた。ダム建設により強制移住させられた「三峡移民」のなかには、十分な補償を受けられないまま貧困者に転じることもあった。また、水没予定地域には数千年の歴史をもつ都市も含まれており、史跡や文化財の流失も危惧された。本作品は、三峡ダムの建設にともなう社会問題が世界的に注目されるなか、沈みゆく歴史都市・奉節を舞台に撮影されたものとなっている。(河合洋尚)
「包摂と自律の人間学―マイノリティ・ボイス=少数派の声—」国立民族学博物館 鈴木紀
マイノリティ=少数派であるとは、どのようなことなのでしょうか。それは、自分の悩みが周囲に共有されず、寂しさや心細さを感じている状態だと考えてみましょう。そういう時には、自分が何をすべきか判断し(=自律)、必要ならば助け求める(=包摂)ことが望ましいのですが、なかなかそうはいきません。声に出すと、自分がますます不利にならないか、家族や友人に迷惑がかからないかと気後れします。あるいは直面している問題が大きすぎたり、恐ろしすぎたりする場合には、言葉を飲み込んでしまうかもしれません。今年度のワールドシネマでは、少数派の人びとの境遇を描いた映画を見ていきます。マイノリティの声に耳を傾け、声にすらならない感情に触れてください。その経験が、周囲にマイノリティがいることに気づいた時、そして私たち自身がマイノリティであると感じた時に、勇気をもって行動することに役立つことを願っています。
国立民族学博物館 企画課博物館事業係
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