みんぱく映画会
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2016年3月20日(日・祝)
サンドラの週末 -
研究領域「包摂と自律の人間学」
チラシダウンロード[PDF:2.71MB]国立民族学博物館では<包摂と自律>のテーマにあわせて、研究者による解説付きの上映会「みんぱくワールドシネマ」を実施しています。7年目の今期は<マイノリティ・ボイス=少数派の声>をキーワードに映画上映を展開していきます。今回はベルギー・フランス・イタリア合作「サンドラの週末」です。ヨーロッパの小都市の小さな会社から突然の解雇を告げられた女性が、最後の猶予に賭けて奔走する週末を通して、様々な立場に立つ労働者と人間同士の信頼について考えていきたいと思います。
- 日 時:2016年3月20日(日・祝)13:30~16:00(開場13:00)
- 場 所:国立民族学博物館 講堂
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定 員:450名
※入場整理券を11:00から観覧券売場(本館2F)にて配布します。事前申込は不要です。 - 要展示観覧券(一般 420円)
- 主 催:国立民族学博物館
● みんぱくワールドシネマ 映像に描かれる<包摂と自律>─マイノリティ・ボイス=少数派の声─
第33回上映会- サンドラの週末 Deux jours, une nuit
- 2014年/ベルギー・フランス・イタリア合作/95分/フランス語/日本語字幕付き
- 【開催日】2016年3月20日(日)13:30~16:00(開場13:00)
- 【監督】ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ
- 【出演】マリオン・コティヤール ファブリツィオ・ロンジォーネ
- 【司会】松尾瑞穂(国立民族学博物館准教授)
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【解説】宮下隆二(作家)
鈴木紀(国立民族学博物館准教授)
「映画解説」
経済的危機に直面するヨーロッパを背景に、自らの尊厳をかけて立ち上がる女性の孤独な闘いの行方を見届ける人間ドラマ。体調不良で休職していたサンドラは、復帰間近の金曜日に、予期せず解雇を告げられる。交渉の末、サンドラの復職かボーナスかの投票で社員16名の過半数の支持を獲得できれば解雇が撤回されることになった。その週末、献身的な夫や頼もしい友人に後押しされ、すべての同僚の説得に訪ねて回るが、それぞれに事情を抱える彼ら彼女らにも、様々な波紋が広がっていく。「少年と自転車」(ワールドシネマでも2011年に上映)など、社会的に弱い立場に置かれた人たちの声を送り届けてきたダルデンヌ兄弟監督が、何度もくじけそうになりながら秘めたる強さに目覚めていく女性の軌跡を、丹念に描写。フランスを代表する女優マリオン・コティヤールが、サンドラの心模様の移ろいを見事に演じ切り、アカデミー賞ノミネートのほか数々の賞を受賞、観る者ひとりひとりの心にも深遠な問いを投げかける佳篇となった。(映画評論家 服部香穂里)
ゼロサム社会を超えて
本作の舞台とされるベルギーは、移民に寛容な政策のため社会に多様な人種層を抱えており、失業率もここ10年ほど7~8%で推移している。日本の場合、リーマンショック翌年の2009年でも5%程度だ。作中でサンドラが訪問する従業員の中には、質素なアパートに住み、一見してアフリカ系やアラブ系と分かる者もおり、社会背景をうかがわせる。経済のグローバル化の影響も見逃せない。「アジア勢の太陽光パネルと戦うため」に、社長はコスト削減をする。労働コストの安い国に生産拠点を集約する巨大資本に対抗するのは、小さな町工場には容易ではない。そのために最も弱い部分(サンドラ)が標的になった。逆に彼女が生き残るためには、他の従業員に犠牲を強いねばならない。解雇かボーナスかという二者択一は一見シュールに見えるが、現代の資本主義社会におけるゼロサムゲームを象徴している。限られたパイを奪い合うので、誰かの利益が別の誰かの損失となるのだ。同様の事例は形を変えて、世界中で起こっている。他人を犠牲にして自分が生き残ることに罪悪感を覚え苦悩するサンドラが、最後に下した決断に注目したい。(宮下隆二)
「包摂と自律の人間学―マイノリティ・ボイス=少数派の声—」国立民族学博物館 鈴木紀
マイノリティ=少数派であるとは、どのようなことなのでしょうか。それは、自分の悩みが周囲に共有されず、寂しさや心細さを感じている状態だと考えてみましょう。そういう時には、自分が何をすべきか判断し(=自律)、必要ならば助け求める(=包摂)ことが望ましいのですが、なかなかそうはいきません。声に出すと、自分がますます不利にならないか、家族や友人に迷惑がかからないかと気後れします。あるいは直面している問題が大きすぎたり、恐ろしすぎたりする場合には、言葉を飲み込んでしまうかもしれません。今年度のワールドシネマでは、少数派の人びとの境遇を描いた映画を見ていきます。マイノリティの声に耳を傾け、声にすらならない感情に触れてください。その経験が、周囲にマイノリティがいることに気づいた時、そして私たち自身がマイノリティであると感じた時に、勇気をもって行動することに役立つことを願っています。
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