みんぱく映画会
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2017年9月18日(月・祝)
おみおくりの作法 -
チラシダウンロード[PDF:2.06MB]国立民族学博物館では2009年度から、研究者による解説付きの上映会「みんぱくワールドシネマ」を実施しています。9年目の今期からは<人類の未来>をキーワードに、映画上映を展開していきます。今回はイギリス・イタリア合作「おみおくりの作法」を上映します。孤独死を遂げた人を、できる限りの誠意を尽くして“おみおくり”する仕事に臨んできた民生係のジョンの姿を通して、人間関係が希薄になりつつある現代社会の中で、さまざまな人生を歩んできた人びとの尊厳ある生と死について、日本のお彼岸の季節に考えたいと思います。
- 日 時:2017年9月18日(月・祝)13:30~16:00(開場13:00)
- 場 所:国立民族学博物館 講堂
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定 員:450名
※入場整理券を11:00から講堂前(本館2F)にて配布します。事前申込は不要です。 - 要展示観覧券(一般 420円)
- 主 催:国立民族学博物館
●開館40周年記念 みんぱくワールドシネマ 映像から考える<人類の未来>
第37回上映会- おみおくりの作法 STILL LIFE
- 2013年/イギリス・イタリア/91分/英語/日本語字幕付き
- 【開催日】2017年9月18日(月・祝)13:30~16:00(開場13:00)
- 【監督・脚本・製作】ウベルト・パゾリー二
- 【主演】エディ・マーサン ジョアンヌ・フロガット
- 【司会】鈴木紀(国立民族学博物館准教授)
- 【解説】菅瀬晶子(国立民族学博物館准教授)
「映画解説」
ロンドン南部ケニントン地区の民生係を務める独身のジョンは、孤独死した人が遺した品々を頼りに親類縁者を探し出し、心づくしの弔辞とBGMによる葬儀で送り出してきたが、人員整理で職を失う。自宅アパートの真向かいに住むも、数週間前に亡くなるまで一面識もなかった酒浸りの男を最後の案件に、娘と思しき少女の写真が貼られたアルバムを携えた彼は、故人の足跡をたどる旅に出る。かつての恋人や戦友、ホームレス仲間らの想いに触れるうちに、平穏だが単調なジョン自身の生き方にも変化が芽生える。プロデューサーとしても活躍する監督が、ある新聞記事を糸口に取材を重ね、地域や家族のつながりが希薄になりつつある現代社会を背景に、ひとりきりで亡くなったひとを手厚く弔う公務員の奮闘を静謐なトーンで描写。やりきれない矛盾をはらむ現実世界の光と闇が投影された主人公の、思いがけない出逢いや発見に突き動かされ、恋の予感にときめく心模様を、英国の名脇役のエディ・マーサンが、内省的な繊細さで見事に表現する。誰にも死は不意に訪れるが、生の証はさまざまなかたちで息づき続けることをしみじみと謳い、ヴェネツィア国際映画祭などで賞賛された佳篇だ。 (映画評論家 服部香穂里)
「不寛容の時代」を越えてゆくための道しるべ
原題のStill Lifeとは、静物を意味する。実際、静謐な作品である。主人公のジョン・メイは、孤独死を遂げた市民の身元調査と葬儀の手配など、「死者を見送ること」を専門におこなう民生係の公務員であるが、無駄口はいっさいたたかず、自分の思いを口にすることもほとんどない。独り暮らしの彼のつましい生活は、まさしく静物画のようだ。
静謐な作品ではあるが、本作が描き出しているものは多い。現代イギリスの宗教的多様性、都会に生きる現代人の孤独、親子の断絶と家族の喪失。それらすべては、ジョンを理解しない上司が体現している、ひとりの人間を単なる数字やデータとしてしか扱わない現代社会の無味乾燥さ、ゆがみへと収斂されてゆく。戦争やテロのニュースが流れても、それを観るわれわれは、いつしか犠牲者の数の前で感受性を麻痺させてしまい、なぜ彼らが死んだのか、なぜそんなことになったのかという現実に実感を持てずにいる。われわれはみな、魂のどこかが欠落しているのだ。
ポピュリズムが台頭し、先行き不透明な中で人びとが衝突する2010年代は、「不寛容の時代」と呼ぶことができるだろう。終始一貫、死者に対して分け隔てのない誠意を示す、宮沢賢治の「雨ニモ負ケズ」を想起させるようなジョンの仕事ぶりは、不寛容とはまさに相対するものである。そこには、魂が欠落した「不寛容の時代」を越えてゆくための道しるべとすべき、普遍的な輝きがあるのではないだろうか。(菅瀬晶子)映像から考える<人類の未来>国立民族学博物館 鈴木紀
国立民族学博物館では2016年度より特別研究「現代文明と人類の未来─環境・文化・人間」を開始しました。これは、現代文明の諸課題に対して解決志向型のアプローチをとる研究です。現代文明は物質的な豊かさと普遍的な価値観を広めましたが、同時に環境破壊や文化摩擦を生み出しています。民族学や文化人類学の立場からは、現代文明の矛盾はどのように現れるのか、そしてその解決策は何かを、地域社会や民族文化に視点を据えて考えることが重要です。みんぱくワールドシネマのねらいは、この特別研究の問題意識を来館者の皆様と共有することにあります。世界の映画を通して、現代文明を問い直し、多元的な価値が共存する人類の未来を展望したいと思います。
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