国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく映画会

2018年3月10日(土)
ディーパンの闘い

チラシダウンロード[PDF:2.49MB]

国立民族学博物館では2009年度から、研究者による解説付きの上映会「みんぱくワールドシネマ」を実施しています。9年目の今期は<人類の未来>をキーワードに、映画上映を展開しています。今回はフランス映画「ディーパンの闘い」を上映します。戦火のスリランカから逃れ、フランスで新しい生活を始めた“偽装家族”を通して、難民の状況について考えたいと思います。

  • 日 時:2018年3月10日(土)13:30~16:30(開場13:00)
  • 場 所:国立民族学博物館 講堂
  • 定 員:450名
    ※入場整理券を11:00から講堂前(本館2F)にて配布します。事前申込は不要です。
  • 要展示観覧券(一般 420円)
  • 主 催:国立民族学博物館
 

●開館40周年記念 みんぱくワールドシネマ 映像から考える<人類の未来>
第40回上映会

ディーパンの闘い Dheepan
2015年/フランス/115分/フランス語・タミル語・英語/日本語字幕付き
【開催日】2018年3月10日(土)13:30~16:30(開場13:00)
【監督】ジャック・オディアール
【主演】アントニーターサン・ジェスターサン カレアスワリ・スリ二バサン
【司会】鈴木紀(国立民族学博物館准教授)
【解説】杉本良男(国立民族学博物館名誉教授)
「映画解説」

見ず知らずの女性と少女と家族を装い、内戦下のスリランカからフランスに逃れた元兵士の、孤独な奮闘を描く重厚な人間ドラマ。反政府軍として身を投じた激戦で妻子を失い、名前を“ディーパン”と改めた彼は、行動をともにする偽装母娘と難民審査を何とか切り抜け、パリ郊外の団地で管理人の職を得る。言葉も解らず不慣れな土地で、実の家族として振る舞う息苦しさや苛立ちから、何かと三人は衝突するが、向上心いっぱいに新生活に順応する娘に、大人たちも感化されていく。親愛の情が育まれる中、祖国に葬り去ったはずの過去や、都会の片隅に巣食う暴力が、彼らに襲いかかる。社会の混沌をえぐる意欲作で、国際的に賞賛されるフランスのジャック・オディアール監督が、深刻度を増す移民問題を背景に、心身に傷を負う者同士が不器用ながら再生に向かう軌跡を、繊細かつ力強く映し出す。理不尽な現実にも自らの信念で立ち向かう猛者の気骨が、観る者の心を鷲掴みにし、カンヌ国際映画祭では最高賞のパルムドールが授与された。(映画評論家 服部香穂里)

タミル難民の苦難の歴史

インド洋の真珠と称えられたスリランカでは、1983年から2009年まで民族間紛争が続いた。政治経済的な思惑も絡んで、多数派のシンハラと比較的少数派のタミルとの対立が続き、双方に多くの犠牲者を生んだ。この間、主にタミル人がこの島国を出て、世界各国に難民、移民として流出した。1983年当時は、難民がビザなしで東ドイツに入り、その後ベルリンの壁を越えてヨーロッパに拡散したとまことしやかに語られていた。それ以降も難民の流出は続いたが、結局フランス、スイスなどに落ち着いた人びとが多かったようである。現在パリの北駅の周辺にはスリランカ出身のタミル人が固まって住んでいて、一帯がタミル人街のようになっているところがある。中には怪しい商売をして周囲からうとまれている人びともあったが、この映画ではそうした底辺に生きる難民の苦難がリアルに描かれている。主演のジェスターサン自身が、かつてタミル民族主義団体に所属し、逮捕経験もある。その後、スリランカを脱出し、各地を転々としてからパリに落ち着いたという。その来歴自体に、スリランカ・タミルの苦難の歴史がリアルに刻み込まれている。(杉本良男)

 
映像から考える<人類の未来>国立民族学博物館 鈴木紀

国立民族学博物館では2016年度より特別研究「現代文明と人類の未来─環境・文化・人間」を開始しました。これは、現代文明の諸課題に対して解決志向型のアプローチをとる研究です。現代文明は物質的な豊かさと普遍的な価値観を広めましたが、同時に環境破壊や文化摩擦を生み出しています。民族学や文化人類学の立場からは、現代文明の矛盾はどのように現れるのか、そしてその解決策は何かを、地域社会や民族文化に視点を据えて考えることが重要です。みんぱくワールドシネマのねらいは、この特別研究の問題意識を来館者の皆様と共有することにあります。世界の映画を通して、現代文明を問い直し、多元的な価値が共存する人類の未来を展望したいと思います。

■お問い合せ先
国立民族学博物館 企画課博物館事業係
〒565-8511 大阪府吹田市千里万博公園10-1
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