みんぱく映画会
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1995年9月30日(土)
東北の民間信仰―恐山のイタコたち― -
第24回みんぱく映画会
1995年9月30日(土) 14:00~16:15
解 説:大森康宏(国立民族学博物館教授)
協 力:
冒険とスポーツの国際映画祭 白馬大会実行委員会
日本映像民俗学の会
財団法人千里文化財団今回上映する映画は、平成4年から撮影・制作を続けている東北地方の巫者(ふしゃ)にかかわる映画作品です。日本では昔から、吉凶禍福を占ったり死者のことばを語ったりする、民間の土着的宗教を伝統的に守ってきた巫者が存在している。彼らは、イタコ、カミサマ、ユタ、拝み屋さんなどと呼ばれてきた。今回は、東北の女性巫者であるカミサマの活動を紹介する映画を中心に上映します。
『津軽のカミサマ』
制作:国立民族学博物館 企画・撮影・制作:大森康宏[1994年、16m/m、92分、カラー]
東北地方の巫者といえば、青森県を中心としてイタコを想い描くであろう。だが、厳密には、視覚に障害のある女性で、判断、占い、祈祷、オシラ神遊ばせ、そして特に死者の霊を降ろすホトケオロシ、または「口寄せ」と呼ばれるものを実行するイタコ系と判断、予言、祈祷などを 中心に行うゴミソ系のカミサマとの区別がある。後者は神と直結対話することが多く、かならずしも眼に障害はもっていない。そして一般に病気や精神的悩みを解決してくれる女性の巫者と考えられている。
映画に登場する女性は、カミサマとして活動をはじめ、のちに口寄せもするイタコとなった巫者の一人である。
この映画は、1995年3月フランス、パリ第14回民族誌映画大会にてグランプリ(ナヌーク賞)を受賞した。『霊場恐山』
制作:国立民族学博物館 撮影・制作:大森康宏[1994年]
日本三大霊場の一つといわれる恐山では、毎年7月20日から24日まで夏の大祭が催される。
東北地方では、こうした死者の魂がこもる死者供養の場としての恐山は、マスコミの情報によって近年全国に知られるようになった。
- 大森康宏(おおもり やすひろ)
- 昭和18年東京都生まれ。立教大学経済学部卒。フランス、パリ大学大学院卒。民族学博士。民博助手をへて、現在同館教授。民族誌映画専攻。映画利用による民族学研究に従事。フランスの移動民族や狩猟、アフリカの鉄造り、バリ島の水牛車競争と葬送儀礼、そして日本の成人式や道祖神そして東北のイタコなど、現在までに37本の映画を制作。昭和60年「地中海に関する人類学映画祭」イタリアにてグランプリ受賞。平成6年「パルヌ国際人類学映画祭」エストニアにて映画賞、また平成7年フランス、「パリ第14回民族誌映画大会」にてグランプリ受賞。これらの業績によりフランス政府よりパルム・アカデミック勲章を受賞した。