国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

地域テーマ展示「アフリカ地域の文化:セネガルの街角」


現代アフリカの諸社会には、さまざまな民族に固有の文化が生きつづけているとともに、いわゆる近代化の影響もいろいろなかたちであらわれています。とくに都市部における消費文化は、人びとの生活を大きくかえました。われわれからみれば、第三世界の都市には失業や貧困などといったマイナスのイメージが先行していますが、じつは都市において伝統と現代が融合するような現象が起きているのです。
 
今回のテーマ展示「セネガルの街角」で紹介するのは、そのような都市に生きる人びとが創りだす文化の一面です。首都ダカールの街をいろどるかのように路上で売られている「ガラス絵」と「空き缶細工」は、人びとの生活の糧であると同時に、つくる人の創作の楽しみがあふれる都市のアートです。
 
ガラス絵はヨーロッパのガラスイコン(聖画像)をはじめ世界各地でみられ、セネガルへはイスラム世界から伝播したとかんがえられています。一九世紀後半にはセネガル人による制作がはじまり、その後、おおくの作家が誕生しました。セネガルの歴史や文化、日常生活があざやかな色彩で描かれ、人びとに親しまれてきましたが、今日では海外での展覧会をとおして、むしろ国外での人気が高まっています。
 
空き缶細工は、リサイクルのためのごみ集めから出発しました。都市の失業者が日銭を稼ぐために空き缶を収拾していたのがはじまりです。そのなかから空き缶を利用したかばんや子どものおもちゃなどをつくる人があらわれ、単なるごみ集めは創造的な営みに発展しました。

ガラス絵に描かれた世界は、セネガルに生きる人びとがとらえた自画像としてのアフリカ社会です。どのような生活場面が強調されているか、あるいはセネガル美人の特徴や理想的な家族のかたちは何かなど、絵に表現されているメッセージを読み取ってください。また空き缶細工からは、利用されている缶の種類とメーカーに注目すると、現代アフリカにおける消費生活の一端が垣間みえるにちがいありません。

展示担当/三島禎子
月刊みんぱく2003年4月号より転載