国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

Seoul Style 2002 E-News 『こりゃKOREA!』


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Seoul Style 2002 : E-News (創刊号)
『 こりゃKOREA!』
http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/200203/index 
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● はじめまして

 こんにちは、みなさん!『こりゃKOREA!』のご購読ありがとうございます!
 『こりゃKOREA!』は、国立民族学博物館で3月21日から開催される特別展「2002年ソウルスタイル ─ 李さん一家の素顔のくらし」のプロジェクト・チームが提供するE-Newsです。HPからの情報発信、蓄積と並行して、HPでは拾えない特展公開の舞台裏や展示品収集にまつわる苦労話、展示計画の現場を裏で支えてくれるさまざまな人たちの特展へのかかわりを積極的にとりあげていきます。ご期待ください。
 「2002年ソウルスタイル ─ 李さん一家の素顔のくらし」は、今までの展示の概念をうちやぶるおもしろさです。この「ソウルスタイル」をみなさんに楽しんでいただくことを最大の目的として、『こりゃKOREA!』は、空前絶後の展示計画の舞台裏をお伝えしていきたいと思います。
 記念すべき創刊号は、特別展の実行委員でもある佐藤浩司編集長がお届けします!
清水郁郎(副編集長) 
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● 2002年ソウルスタイル   ここだけの話 - 1
  「李家の引っ越し」
佐藤浩司(編集長)

 昨年12月、ソウルに住む李さん一家の引っ越しにたちあってきました。引越!? いや、引っ越すのは李さん一家ではなくて、李さんの家にある一切合切の家財道具のほうです。なにしろ2002年の特別展のテーマは「李さん一家の素顔のくらし」、なぜこんなとてつもない計画をはじめてしまったかのテンマツは、また別の機会にご紹介するとして、ともかく今回は、みんぱくにある特別展の会場まで、その家財道具のお引っ越しです~
    ─ 引っ越しの様子http://www.minpaku.ac.jp/special/200203/news/01

 いよいよ待ちに待った引っ越しの当日。李家の山の神であられるオモニは、結婚以来こつこつためこんできた記念の品がつぎつぎとダンボールにおさめられてゆくのをみて、一瞬涙ぐみました。これからは、わが家の記録は韓国の記録になります、そうオモニは今回の展示への決意をかたってくれていたのです。

 それに、、、台所におさまるであろうぴかぴかのシステムキッチンやアメリカ製の冷蔵庫、さらに韓国のヒット商品、最新型の特大キムチ冷蔵庫にイタリア製の煮沸機能付きの最新型ドラム洗濯機、そして居間には、やはりイタリアブランドのソファーセット。。。ひと足はやくインターネット・ショッピングで手に入れた家電製品は、まだ梱包もとかれないまま部屋の片隅に山と積まれています。引っ越しの最中にうれしそうにつかってみせてくれたイタリア製のスチーム掃除機は、家事労働にすぎなかった部屋の掃除を工事現場の熟練作業に一変させてしまうほどの商品。盛大な騒音をまきちらしながら蒸気を吹きつづけるその姿はまるで主婦の気概が噴出しているかのようでありました。

 現代人の心の飢えをみたすにたりる商品のかずかず。一生のあいだに、私たちはもう二度とこうした買い換えの機会はないでしょうから。オモニはそう自分を納得させて、それまでの我慢も蓄えも一気にはきだしてしまったようです。それとも、(エ!まさか?)ひとつひとつ購入の経緯を丹念に大学ノートに記録しているのは、はやくもつぎの展覧会を見こしてのことか。もしそうだとしたら、まさにオモニの面目躍如!

 引っ越しのさいにちょっとした事件がありました。買ったばかりの家電製品がいくつかあやまってダンボール詰めにされ、コンテナに積みこまれてしまったのです。電気釜、ビデオ、それにあのスチーム掃除機まで。さがしだすといっても、梱包した荷物の数は大小合わせて230箱をこえています。こんなに荷物の多い引っ越しははじめてだ、と8人がかりで梱包に2日もかかった業者があきれるほど。とうとうビデオだけはみつからなくて、せっかく衛星放送の受信契約までしてたのしみにしていた最新の三星ビデオが新ソウルスタイルでお目見えなんてことに(^_^;)

 このどたばたの翌日、小学6年生のドンファ君はパジャマのうえにジャンパーをはおっただけの姿で学校へむかいました。かろうじて救出した家電製品のかげで、子供たちの着る服は、教科書やノートをいれた通学鞄もろとも持っていかれてしまったのです。そして、部屋の荷物が片づくや、早朝からあらわれたリフォーム屋のおばさんは(なんだ、リフォームの相談もうけていたんだな、私は)、部屋中にエアブラシのペンキをまきちらしながら、けたたましく模様替えの指図をはじめました。

 ところでアボジは? 李さん一家の主、アボジが2日間の出張からもどってきたのは、おりしもそんな時だったのです。変わり果てた我が家にしばし絶句。。。。じつは、オモニと私は朝から連れだってちかくの役場に出かけていたのです。役場のコンピュータを拝借して資料整理のつづきをするために。韓国にやってきてから1週間というもの、毎日のように私はオモニにへばりついて3000点もある物の由来をひとつ、またひとつとたしかめる作業に没頭していました。賽の河原のようなこの作業はいまも私をさいなんでいますよ。そうした情報のなかにこそ人間性の本質が見え隠れしているのだ、こうした方法以外にはこの無限の我楽多に、そして同時代を生きるわれわれにも、生命の光をともすことはできないのだと確信するからです。

 それはさておき、オモニとふたり、昼過ぎに家へもどってきてみると、終業式をおえたドンファと妹のウィジョンも帰宅していて、いまや本当に工事現場と化した食堂で家族4人が呆然と立ちすくんでいたのです。つぎの瞬間、アボジとオモニのあいだをとびかった激しい口論の内容は、、、へへ、韓国語がわからなくてさいわいでした。おたがい満足してやっていることだから、いつもやさしいハルモニ(おばあさん)はそう言って私をなぐさめてくれました。

 じゃあ、このつぎは特別展のオープニングでお会いしましょう。みんな手ぶらできても大丈夫。これからは日本にも帰る家がありますからね(^_^)/~~~

(国立民族学博物館) 
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☆特別展「2002年ソウルスタイル ─ 李さん一家の素顔のくらし」
 3月21日(木)~7月16日(火)
 http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/200203/index

★国立民族学博物館のホームページ:みんぱくウェブサイト
 http://www.minpaku.ac.jp/
 
※このE-Newsは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』 を利用して発行しています。
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編集・発行:2002年ソウルスタイル・プロジェクト・チーム 

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